「葉酸を妊活中から摂取すると、お腹の赤ちゃんの病気(神経管閉鎖障害)を防ぐ」
「葉酸は壊れやすく、食品から十分な量を摂取することが難しい」
「そのため、葉酸サプリメントで補助的に摂取することが望ましい」
という知識は、妊活を始めた方に広く知られるようになりました。
日本産婦人科学会では、1日400μgの葉酸を摂取することで神経管閉鎖障害リスクを下げると指導しています。
しかし、葉酸の効果はそれだけではありません。赤ちゃんの先天性心疾患リスクも下げることができることが明らかになりました。
細胞分裂に欠かせないのに、調理で壊れやすい…葉酸の効果と特徴
本題に入る前に、妊活・妊娠中の葉酸の効果と特徴について、おさらいしましょう。
葉酸はビタミンBの一種で、細胞のDNAやRNAの合成に欠かせない栄養素です。細胞分裂に必要なビタミンで、妊娠初期には特に消費されやすい栄養素です。
ビタミンB12とともに働くことで赤血球を造る作用もあります。十分な量の赤血球は貧血を防ぎ、体内に十分な酸素と栄養を運ぶことができます。
母体にとっても大事な栄養素ですが、妊娠初期の胎児にとっては特に重要です。葉酸は中枢神経(脳や脊髄)の元になる「神経管」の形成を促す、大切なはたらきがあります。これは妊娠初期の4~5週に形成されるため、妊娠する前から十分な量を摂取しなければ不足するおそれがあります。
妊活中、妊娠初期の女性は1日400μg摂取することで、神経管の形成不良を70%減らす効果があるとされています。
葉酸はブロッコリーなど緑黄色野菜、レバー、イチゴなど、多くの食品から摂取できます。
しかし葉酸は水溶性で、水に溶けやすく身体に貯まりにくい性質があります。
さらに熱で壊れやすいため、食事から十分な量の葉酸を摂取することは難しいビタミンです。そのため普段の食事に加えて、葉酸サプリメントの併用が推奨されています。
心臓疾患を防ぐ効果も?葉酸のもう一つの効果
妊活中、妊娠中の女性が葉酸を摂取する理由は、公的には「赤ちゃんの神経管閉鎖障害を防ぐため」とされています。
しかし防げるのは神経管閉鎖障害だけではありません。心臓病など先天性心疾患のリスクを下げることも分かりました。
葉酸不足を補うために、小麦など主食に葉酸を添加する国があります。カナダは1998年から小麦製品に葉酸を添加していますが、添加後の新生児の先天性心疾患が11%も減少していることが分かりました。
詳しく調べたところ、遺伝性の心疾患は防ぐことができませんが、心臓から全身/肺へ送り出す血管や心臓の構造に異常がある症状は約30%減らすことができることも判明しました。
胎児の心臓は4~6週までに完成するため、お母さんがこの時期に十分な量の葉酸を摂取できれば、先天性心疾患リスクをある程度下げることができます。
たとえ妊活や不妊治療を行っても、いつ子供を授かることができるかは誰にも分かりません。
いつ授かっても良いように、妊活中から葉酸を摂取しましょう。可能なら、妊娠する可能性がある女性は毎日摂取することが望ましいでしょう。
多くの先天性心臓疾患は手術で治療が可能です。しかし…
先天性心疾患は多くの種類があります。肺動脈と大動脈が逆に繋がる完全大血管転位症、心室が1つしかない単心室症など、出生後すぐに治療を行わなければ命にかかわる症状もあります。
ここでは先天性心疾患のひとつ、単心室症について解説します。
単心室症はひと昔前までは生後すぐ亡くなってしまう疾患でしたが、現在では心臓手術を行えば高い確率で成人まで生存することができます。根治はできませんが、心室が1つでも手術で肺と全身に血流を送るための血流回路を創ることはできます。
しかし生後早い時期から2~4歳までに複数回心臓手術をする必要があり、大きな負担がかかります。最後の手術(フォンタン手術)に成功しても生涯定期健診が必要で、スポーツやピアスを開けることなどが制限されます。
医療の進歩で、以前はなすすべもなかった疾患が次々と治療できるようになりました。たとえ先天性心疾患があっても悲観することはありませんが、栄養摂取で可能性を少しでも減らせるなら、それに越したことはありません。
リスクを少しでも減らすために葉酸を
十分な量の葉酸を摂取しても、神経管閉鎖障害や先天性心疾患を100%防ぐことはできません。これらの症状が発生する原因はすべて解明されていないため、避けることができないこともあります。
しかしリスクを減らすことはできます。あなたと将来宿るお子さんのために、今日から葉酸の効率的な摂取を意識しましょう。
葉酸サプリには合成した葉酸と食品から精製した葉酸がありますが、どちらでも問題はありません。人工的に合成した葉酸のほうが安価ですが、体内に吸収されやすいと言われています。
サプリメントだけに頼らず、ぜひ日々の食事にも緑黄色野菜やイチゴなど葉酸が多い食品を適量取り入れましょう。
参考サイト
日本小児神経外科学会 「適正な葉酸摂取による神経管閉鎖不全症の発生予防」の啓発活動に関するご案内
高橋ウイメンズクリニック 葉酸は赤ちゃんの心臓病も予防できるかも!?
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