伝統ある排卵誘発剤「クロミッド」のメリット・デメリット

妊活コラム


不妊治療でよく使われる代表的な薬に「クロミッド®」(成分名クロミフェンクエン酸塩)があります。
クロミッドは歴史が古い排卵誘発剤で、1960年頃から使用が始まりました。そのため使用実績がとても多く、薬の作用、副作用がよく知られています。
リスクはありますが、限られた期間で使うと排卵が促され、黄体ホルモン分泌が良くなります。卵の質が良くなることも知られ、不妊治療では第一の選択肢になる薬です。

排卵誘発だけではない、クロミッドはどんな薬?

クロミッドといえば排卵誘発剤、と思う方が多いでしょう。排卵誘発効果を狙って投与することが多い薬なのは事実です。
しかしクロミッドの効果は排卵誘発だけではありません。以下のような作用もあります。

・不安定な排卵を改善し、定期的に排卵できるよう促します
・定期的に排卵ができる体作り
・黄体ホルモン分泌が増え、妊娠しやすい身体を保ちます
・卵の質が改善します

なぜ、これだけ多くの効果があるのでしょうか。これはクロミッドの「抗エストロゲン作用」のためです。

クロミッドは脳を騙し、エストロゲンを多く分泌させるように促します。

クロミッドの持つ抗エストロゲン作用とは、ひらたく言えば
「(本当はきちんとエストロゲンを分泌しているのに)脳にエストロゲンが足りていない!と騙す作用」
のことです。

卵子を育て、妊娠するためには2つの女性ホルモンが必要です。
卵子(卵胞)を育てるエストロゲン(卵胞ホルモン)と、妊娠しやすい身体を作るプロゲステロン(黄体ホルモン)です。
プロゲステロンは、排卵が終わった卵胞のカラから分泌されるホルモンです。そのため「エストロゲンを必要量分泌させること」が妊娠の第一歩。
クロミッドは脳(視床下部)に「エストロゲンが足りない」と騙します。まんまと騙された脳は卵巣に「もっとエストロゲンを分泌せよ」と指令を出します。
その結果、体内に普段よりエストロゲンがたくさん分泌され、卵胞の成熟が良くなります。

そのため、エストロゲンが足りずに排卵障害がある場合は、クロミッドで改善することがあります。
エストロゲンが足りず、卵子の質が良くない場合は、十分なエストロゲンを受けて卵子の質が改善します。
さらに、しっかり成熟した卵胞からはプロゲステロンも十分な量が分泌されます。黄体ホルモン不足で高温期がガタガタになりやすい方も安定しやすくなります。
クロミッドは薬価が安く、昔から使われているので比較的安全に使えるので、不妊治療の初めに使うことが多い薬です。



副作用に注意!きちんと容量、用法を守って服用しましょう。

一方で、クロミッドは厄介な副作用があることで知られています。

・2つ以上の卵胞が育ち、双子が産まれる可能性が上がる(自然妊娠で約1%から4%に上昇)
・子宮頚管粘液が減る
・子宮内膜が薄くなる
・遺残卵胞(排卵されず、卵巣に残った卵胞のこと。ホルモンバランスが乱れ、排卵障害などを起こします)
・まれにOHSS(卵巣過剰刺激症候群)が起こることも
・頭痛、めまい、吐き気、腹痛、目がかすむ、気分が落ち込む、体温上昇などが起こることがあります。

気を付けたいのは、タイミング療法の方です。
子宮頚管粘液が減ると子宮に精子が入りにくくなります。減り方は個人差がありますが、あまりにも粘液が減る場合は投薬を中止し、別の薬に切り替えます。
(人工授精をする場合は問題ありません)

子宮内膜が薄くなると着床しにくくなるので、子宮内膜が薄くなる前に服用を中止します。
クロミッドは連続投与すればするほど、これらの副作用が出やすいと言われています。
そのため原則、最大でも連続6周期しか使えません。服用を止めると粘液や子宮内膜は復活します。

妊活に直接関係しない副作用で注意したいのは、目のかすみです。
この症状が出たら服用を中止し、眼科を受診する必要があります。

メリット、デメリットを把握し、適切に服用する薬です

クロミッドは作用、副作用どちらもある薬です。
メリットとデメリット、どちらも比較的実感しやすいため、普段薬を飲まない方は不安になるかもしれません。

薬を服用する時に大切なのは「メリットを最大限に活かしながら、デメリットをできるだけ下げる」ことです。
そのため服用する時期、期間、連続服用できる周期が厳密に決められています。
クロミッドは昔から使われている薬なので、デメリットを下げるノウハウが蓄積されています。最近認可された薬に比べても、対処しやすい薬と言えるでしょう。
薬の服用に抵抗がある方もいるかもしれませんが、メリットとデメリットを把握して、副作用が出たらすぐに病院に連絡をしましょう。
常に検査などを行い、問題が起きたらすぐに対応することで、副作用リスクを下げることができます。



参考サイト

Wikipedia「クロミフェン」
産婦人科クリニックさくら クロミッド(クロミフェンクエン酸塩) ~排卵誘発剤の効果と副作用~
ASKAレディースクリニック クロミッド錠

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