魚を食べると、子供の神経発達遅延を減らす効果が判明しました。

妊活コラム

日本では伝統的に魚を食べる習慣がありますが、近年は魚介の消費量がどんどん減っています。平成20年(年間消費量36.3kg)以降、消費量は減る一方で、令和元年の年間消費量はわずか23kgまで低下しました。
しかし肉を極力減らして魚を食べると、悪玉コレステロール値の減少やメタボ改善など、健康に良いことはよく知られています。
妊活、妊娠にも魚食は有効で、産まれてくる子の神経発達遅延を減らす効果など、子孫に渡って良い効果があることが分かりました。

日本の母親が魚を摂取する量と、3歳児の子供の神経発達についての調査が報告されています。
ぜひ妊活中から魚介を食卓に取り入れて、いつ赤ちゃんを授かっても良い土台作りをしませんか。

母が魚を摂取すると、子供の神経発達に良い影響が

母が赤ちゃんがお腹の中にいるときに魚を積極的に摂取すると、子供の神経発達に良い影響があるという統計があります。
対象は日本の91,909人の母子で、妊娠中の母親の魚摂取と3歳時の子供の神経発達との関連を評価しました。

評価は5つのカテゴリーで、コミュニケーション能力、粗大運動(走る、歩くなど全身運動)、微細運動(積み木など指先の運動)、問題解決する力、社会性(personal-social)で判断しました。
そのうち、魚食をした妊婦さんの子はそうでない子に比べ、特に微細運動、問題解決する力、社会性でリスクが低いという結果になりました。
手先が器用なこと、トラブルがあっても問題解決する力、社会性は何歳になっても大事な能力です。これらの発達遅延をある程度抑えられるのは、魚食の大きなメリットでしょう。
数値や統計方法などは、以下の論文をご確認下さい。

出典:Maternal dietary intake of fish and child neurodevelopment at 3 years: a nationwide birth cohort-The Japan Environment and Children’s StudyMariko Inoue 1, Kenta Matsumura 1 2, Kei Hamazaki 1 2 3, Akiko Tsuchida 1 2, Hidekuni Inadera 1 2

この調査では、妊婦の時代にどれだけ魚を食べていたかの調査はありません。
推測になりますが、妊婦さんの暮らす地域ではごく常識的な頻度と量を摂取していたと想定できます。



美味しくてヘルシー、血流改善効果も…魚介食のメリット

魚介食のメリットは計り知れません。
たんぱく質が豊富、飽和脂肪酸が少なく、DHA、EPAなど、高度不飽和脂肪酸を豊富に含みます。DHAやEPAは血液循環を良くする働きがあり、血管内の詰まりなどを防ぐ作用もあります。
小魚はカルシウムが豊富で、骨を丈夫にして将来の骨粗しょう症リスクを減らします。

しかし、魚介類の面倒なところは、調理の手間です。においも生臭いことが多く、慣れない人には抵抗があるかもしれません。
近年は自分で魚を捌いて食べる人が減りつつあり、せっかくスーパーや鮮魚店で良さそうな魚があっても調理できない、ということは珍しくありません。
ネット情報や動画などを参考にして魚を捌く練習をするのが理想ですが、内臓のにおいが強くウロコが飛び散るので、趣味でなければ難しいでしょう。

プロに捌いてもらう

いちばん手っ取り早いのは、鮮魚店や鮮魚コーナーの担当に捌いてもらうことです。
すでに捌いた後の魚がパック詰めされていることもあるので、まずはこれを利用しましょう。
食べ方が分からないときはネットで「魚の名前+レシピ」で検索すると、すぐに調べられます。
魚を自力で捌くときも、購入前にウロコと内臓を取ってもらうだけでも調理の難易度が下がります。

食べたことがない魚にチャレンジする

広く普及している鮭やマス(トラウト)は近年、どんどん価格が高騰しています。暖かい海を好む鯖やブリは比較的安価で不飽和脂肪酸も豊富ですが、独特の癖があり、毎日食べるのはちょっと大変です。
ぜひ、季節の旬の魚、ローカルな魚にチャレンジしてみませんか。
たとえば関東から関西に引っ越した方は、タチウオなどは見たことがないかもしれません。
タチウオは柔らかい白身の魚で、関西では焼き魚、新鮮なら刺身などにします。歯が鋭い魚ですが身はあっさりした味わいで、切り身に塩を振って焼くだけでも美味しく食べられます。
季節の魚介類は値段も安く、身もたっぷり詰まっています。魚介は肉に比べて高価なイメージがありますが、旬の魚はあまり高騰しません。

干ものなど加工品は焼くだけで食べられる上に美味しいですが塩分が多いので、時々は生魚や自分で調理した魚を食べるのが理想的です。
最近は価格が上がっていますが、缶詰や冷凍品なども組み合わせて、無理のない程度に調理してみましょう。おいしい上に、将来産まれてくる子の食生活が豊かになります。

妊娠中は、鯨肉や一部の魚介類は摂取量に注意

妊活中は問題ありませんが、妊娠中には摂取量を制限したほうが良い魚介類があります。
特にハクジラ類(イルカなど)や大型魚類は水銀が溜まりやすく、胎児にごく微細な聴覚障害(千分の一秒以下の反応が遅れる程度)などが現れることがあります。
妊娠中はイルカの仲間、キンメダイ、メカジキ、クロマグロなどマグロの仲間は、摂取する頻度と量に注意する必要があります。詳細は以下のサイトをご確認下さい。(PDF注意)

出典:農水省 妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項
しかし、妊活中には問題なく摂取できます。何より魚介類の栄養はとてもバランスが取れて健康的です。リスクのある魚は適量に留め、肉食から魚食中心の生活に替えていきましょう。



参考サイト

PubMed 母親の魚の食事摂取量と3歳時の子供の神経発達:全国の出生コホート-日本環境と子どもの調査

水産庁 (2)水産物消費の状況

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