妊活どころか人生まで奪われる?!知っておきたい子宮頸がんとワクチン・健診

妊活コラム


子宮頸がん、という病気があるのはご存じでしょうか。
性交渉がある女性の大半は、生涯一度は感染するウイルスが引き起こすがんで、年間1万人以上の方が発症し、2,900人もの女性が亡くなっています。
子宮頸がんが恐ろしいのは、20代~40代の妊活世代、子育て世代の女性を襲うことです。小さなお子さんを遺して亡くなるのは、どれだけ無念なことでしょうか。
たとえ一命をとりとめても子宮を摘出して、妊活を諦めざるを得ないことも珍しくありません。

大変恐ろしい病気ですが、性交渉の前にワクチンを接種することで、高い確率で発症を抑えることができます。
ワクチン接種を逃した方は定期的な子宮頸がん検診で、早期発見、早期治療を行いましょう。

別名「マザーキラー」。妊娠可能年齢の女性を襲うウイルス性のがん

多くのがんは、長い時間生きることで細胞ががん化して増殖することで発生します。
子宮頸がんは、ウイルス感染が原因で起こる、とても珍しい種類のがんです。
子宮頸がんの主な原因は、HPV(ヒトパピローマウィルス)の感染です。
HPVは誰でも持つありふれたウイルスで、性交渉がある女性なら生涯一度以上は感染します。
多くの方は免疫でウイルスを排除しますが、一部の方は排除し切れず、子宮頚部に長期感染します。
長期感染した子宮頚部はやがて、前がん病変を経てがんに変異します。感染後、おおよそ2年以上かけてがん化すると言われ、子宮頚部から子宮、腰、肺などさまざまな場所に転移します。
子宮を取り除いて救命できればまだ幸運なほうで、命を落とすケースも珍しくありません。

男性もHPVウイルスを持ち、感染すると尖圭コンジローマを発症することがあります。
確率は低いですが陰茎がん、肛門がん、中咽頭がんなどを発症させるリスクがあります。
そのため、男性のワクチン接種も推奨されています。



子宮頸がんを防ぐワクチン「HPVワクチン」とは?

子宮頸がんを根本から防ぐには、性交渉前に子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)の接種が唯一の解決法です。
小学校6年~高校1年相当の女の子への定期接種は無料で受けられます。
さらに、2025年3月31日まで、平成9年度(1997年4月2日)生まれ~平成18年度(2007年4月1日)生まれの女性で、過去にHPVワクチンの合計3回の接種を完了していない方は「キャッチアップ接種」という枠で追加接種が受けられます。こちらも無料で受けられます。
希望される方は、お住いの自治体のHPにて「子宮頸がんワクチン」と検索し、手続きを行いましょう。

HPVワクチンは子宮頸がんの原因ウイルス、HPVの感染を未然に防ぐために行います。
性交渉の前に接種することで予防効果があり、子宮頸がんを発症した後に接種してもウイルスの排除をする効果はありません。

HPVウイルスは100種類以上あり、その中で子宮頸がんを発症させるのは15種類ほどが知られています。
特に危険なのは16型・18型の2種類で、この2種類だけで子宮頸がんの原因の65%を占めます。
令和5年現在、日本でHPVワクチンは3種類あります。

2価ワクチン(サーバリックス)

子宮頸がんを起こす代表的なHPVウイルス、16型・18型を防ぎます。50~70%の予防効果があります。
接種回数は3回で、筋肉注射で行います。(新型コロナウイルスワクチンと同じ接種法)

4価ワクチン(ガーダシル)

16型・18型に加え、尖圭コンジローマの原因ウイルス、6型・11型を加えたワクチンです。予防効果は2価と同じで、50~70%の予防効果があります。
接種回数は3回で、筋肉注射で行います。

9価ワクチン(シルガード9)

2021年に認可された、新しいHPVワクチンです。HPV16型・18型に加え、31型・33型・45型・52型・58型の感染も防ぎます。
子宮頸がんの原因の80~90%を防ぐ、現在最高峰の効果があるワクチンです。
1回目の15歳までに接種完了する場合は、2回接種で終わるのも利点です。(15歳以上は3回)

詳細は厚生労働省HP「ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~」にてご確認ください。

性交渉をした後でも、HPVワクチンは打つほうが良いという見解があります。
性交渉をした時に感染したHPVの型は防げませんが、それ以外の型なら防ぐことができます。予防効果は下がっても、全くの無防備よりはずっと安全でしょう。
自費接種の場合は3回接種で10万円ほどになりますが、妊活や人生を諦めるリスクを抑えられると思うと、選択肢に入ると思います。

3種類のワクチンとも、高い発症予防効果がありますが、100%抑えることはできません。
20歳を超えたら子宮頸がん検診を2年に一度行いましょう。

気になる副作用は?打って大丈夫?

子宮頸がんワクチンといえば、接種開始後に歩行困難など、重大な副反応が起きたとメディアで騒ぎになりました。
あの後、厚生労働省や地方自治体が大規模な副作用調査を行い、メディアが喧伝する重大な副作用と呼ばれる症状は、ワクチンと関係がないことが明らかになりました。
愛知県名古屋市で行われた、3万人の接種者を対象にした大規模匿名アンケート(名古屋スタディー)では、ワクチンを接種しても重大な症状が増える傾向は見られません。

参考:厚生労働省「HPVワクチンに関するこれまでの経緯及び対応(厚生労働省)①」(PDF注意)
参考:HPVワクチンの副反応に関する,名古屋スタディ-の最終結果

ワクチンなので打った場所が腫れる、一時的な頭痛などの副反応は一定の確率で起こります。
新型コロナウイルスワクチンと同じ筋肉注射なので、インフルエンザワクチンなど皮下注射とは痛む場所が違います。
一般的な予防接種と同じ程度のリスクと考えて、差し支えないでしょう。

「何となく怖い」で避けていると、人生を狂わされるリスクが上がります。
妊活に心置きなく打ち込むためにも、ぜひワクチンの接種と定期的な子宮頸がん検診を受けましょう。



参考サイト

MSD製薬「もっと知りたい子宮頸がん予防」
ミラザ新宿つるかめクリニック 公費で打てなかった子宮頚癌ワクチンを大人になってから打ってもいいの?
神田西口クリニック 男性もヒトパピローマウイルスに感染する。よくある質問に医師が回答します

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