妊活をはじめ生涯の健康習慣を実践する「プレコンセプションケア」(プレコン)とは?

妊活コラム

最近でこそ身近になりましたが、今でも妊活といえば「特別な取り組み」と考えがちです。しかし、妊活を「健康を整える行動の一環」と捉え、妊活を含めた全世代の健康を包括するという考え方があります。それが国や厚生労働省、子ども家庭庁、自治体などが普及を進める「プレコンセプションケア(プレコン)」です。
プレコンとはプレ(前)+コンセプション(妊娠)を合わせた造語で、若い世代の方が将来のライフプランを考えて健康的な生活を送り、妊娠・出産に備えることです。
もとはWHOが2012年に提唱した考えで、「妊娠前の女性とカップルに医学的、行動学的、社会的な保健介入を行うこと」とされています。大げさに聞こえますが、WHOは日本のように医療が広く浸透していない国も対象にしているため、強めの言葉になっています。
プレコンはあまり認知度が高くないかもしれませんが、「妊活を含めて、生涯にわたる健康習慣を身につける」という点では画期的な試みです。妊娠を考える女性だけでなく男性や、生まれたお子さんの健康も包括します。
この記事ではプレコンの考え方と妊活を超えた健康習慣について解説します。



プレコンセプションケア(プレコン)がなぜ必要?妊娠前から始める健康づくりの考え方

若い頃は体力もあり、徹夜をして遊んでもドカ食いをしても何とかなるものです。中にはタバコやお酒を嗜み、性感染症のリスクが高まる行動を取ってしまうこともあるでしょう。女性ならダイエットと称して無茶な食事制限をすることも珍しくありません。
しかし、過剰なダイエットや食べ過ぎなどの不摂生は糖尿病など生活習慣病を引き起こすことがあります。性感染症のクラミジアは重度の卵管閉塞を引き起こし、体外受精でなければ妊娠が難しくなります。
そして過剰なダイエットが原因で月経が止まり、排卵障害を起こすことがあります。排卵障害は不妊治療の中でも治療が難しい分野で、回復が難しいケースも報告されています。さらに痩せすぎると骨粗しょう症になりやすく、将来は寝たきりになるリスクが上がります。
そうなる前に若い頃から自分の今の健康状態を振り返り、改善していこうというのがプレコンの考え方です。

若い頃から「将来のライフプランを考えながら日々の生活に向き合う」という概念は理解しにくいかもしれません。しかし、これからも元気に暮らしていくためには、妊娠を希望してもしなくても「科学的に正しい知識」を持つことは欠かせません。性、妊娠に関して正しい知識を持つことで自分はもちろん、パートナーや将来生まれる赤ちゃんの健康を守ります。

近年は新型コロナなどさまざまな感染症で若い世代も病気に苦しみ、健康に向き合う機会が増えています。このような時代だからこそ、プレコンは重要な考え方になるでしょう。

葉酸摂取、ワクチン接種など…妊活中はプレコンを始めるのに良い理由

妊活中でなければできないことはたくさんあります。
たとえば十分な量の葉酸の摂取、抗体がなければ風しんワクチンの接種、適正体重管理、禁煙など…妊娠する前なら、多くのことが準備できます。
(※風しんワクチンは生ワクチンのため、妊娠中は接種できません。不活化ワクチンや組み換えタンパクワクチン、mRNAワクチンなどは妊娠中も接種できます。具体的な検査や接種時期は医師に相談してください。)

日本は医療体制が整っているため、出産時の死亡率は低く抑えられています。しかし女性の健康管理が原因の出産トラブルは一向に減りません。
低体重児、早産や流産、先天異常などは、女性の生活習慣病や過剰な体重(肥満、痩せどちらもリスクです)、喫煙、加齢がリスク要因です。プレコンは女性の健康問題を改善して、より周産期トラブルを減らそうという意図もあります。

妊娠してから慌てて禁煙をしようとしても、なかなか辞められません。妊娠中に風しんに感染すると、赤ちゃんに先天性疾患が出る可能性が上がります。妊娠初期に葉酸が不足すると、胎児の正常な生育が妨げられることがあります。
現在も予期せず妊娠するケースは少なくありません。妊活をする間もなく妊娠をすると母体と赤ちゃんが健康リスクに晒されるおそれがあります。プレコンは妊活をしてもしなくても、妊娠する前から健康管理をしようという働きかけなので、実現すれば母体と赤ちゃんの健康が維持できます。

プレコンは男性も対象です。パートナーと取り組む生涯の健康習慣

近年は男性も積極的なケースが増えましたが、妊活といえば女性が主体になって行うものでした。しかしプレコンは男性も健康に気遣い、適正な検査や治療を受けることを推奨しています。
男性も生活習慣病になると精子のコンディションが悪くなり、男性不妊になるリスクが上がります。座りっぱなしの生活習慣や過度に自転車に乗る習慣があると、睾丸が温まりすぎて精子にダメージを与える可能性があります。男性は女性以上に生活習慣を見直すべきでしょう。

特に男性は、風しんの抗体検査と禁煙は欠かせません。特に47歳以上の男性(1978年・昭和53年度までに生まれた男性)は風しんワクチンの公的接種を受けていないため、ただちに検査を受けましょう。(該当する方は自治体で無料の検査が受けられるので、お住まいの自治体のHPをご確認下さい。)
喫煙は受動喫煙の元になり、同居家族にも被害が及びます。換気を徹底してもリスクをゼロにはできないので、妊活中に禁煙することを強くおすすめします。



参考サイト

厚生労働省 「プレコンセプションケア」をみんなの健康の新常識に

こども家庭庁 「プレコンセプションケア」とは? 未来のために今知っておきたいこと

国立成育医療研究センター プレコンセプションケアセンター

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