ナッツ類は血流改善を促すビタミンEや亜などが豊富で、妊活に良い食べ物のひとつです。
しかし一方でカロリーが高く栄養過多になりやすい、価格の高騰など良くない面もあります。今まで食べていたオヤツをナッツ類に替える程度にして、過食はしないほうが賢明でしょう。
健康な男性が毎日ナッツを60g摂取すると、精子の運動率が上がったという統計があります。
これを見て「さっそくナッツを食べよう」と思うかもしれません。しかし、良いことばかりではありません。メリットとリスクを見比べて、どの程度なら許容できるか夫婦で確認しましょう。
3ヵ月毎日ナッツ類を60g以上摂取すると、精子の運動率が上がる?
以下のような統計があるのは事実です。この統計をどのように見るべきでしょうか。
「健康な男性223例2件のランダム化比較試験のメタ解析」
「60g/日以上のナッツの摂取は対照群と比較して精子の運動率、活力、形態を増加させるが、精子濃度には影響を及ぼさないことが示された。」
まずは用語解説をします。
ランダム化比較試験は、対象の人たちを無作為に分けて、一方に効果が期待できる薬(今回はナッツ1日に60g)、もう片方に偽薬を出して結果を見る方法です。無作為化比較試験とも言われています。
メタ解析は、複数の研究結果をまとめ,より信頼性が高い結果を求める統計解析手法のことです。
条件が異なる試験を統合する時は、そのまま合計しても正しい回答は得られません。より正確な回答を出すために様々な調整を行います。それがメタ解析です。
ランダム化試験、メタ解析はどちらも科学的により信頼性が高い集計法です。この2つをクリアしているなら信頼しても良い内容と考えます。
信憑性が確認できたら、次は内容を確認しましょう。
1日60gのナッツを食べた男性は、そうでない男性に比べて精子運動率や正常さが上がりましたが、濃度は変わらないことが分かります。
精子運動率が上がれば、運動率に問題がある男性でも妊娠させる力が上がるように思えます。しかし実際はそこまで簡単なものではなさそうです。
精子の質は高めても妊娠とは無関係?
この調査には、このような報告もあります。
「非ランダム化研究では食事からのナッツ摂取と男性における従来の精子パラメーター、あるいは生殖補助医療を受けている男女における胚着床、臨床妊娠、生児出生との関連は報告されていない」
非ランダム化とは、ある対象を二つに分ける際に無作為に分けない方法です。
ランダム化に比べて信憑性は一歩劣ると言われますが、信頼度は比較的高い方法です。
この調査では(たとえ精子の状態が良くなっても)着床、妊娠、出産との関連は認められませんでした。
妊活の目標は妊娠です。ナッツを毎日60gも摂取しても、この調査では妊娠と関連が見られないことが分かります。
ナッツは高カロリーという欠点も
ナッツは血流改善を促すビタミンE、悪玉コレステロールを減らすオメガ3系多価不飽和脂肪酸などが含まれ、栄養価が非常に高い食品です。
しかしカロリーが高く、肥満リスクがあります。アーモンド(煎り)60gで365kcalもあるので、よほど痩せている男性でなければ肥満になりかねません。
肥満になると精子造成にも悪い影響があるので、利点より欠点が多いように感じます。
近年はアーモンドの不作が続き、円安の影響もあって、ナッツ類の値段は高くなっています。金銭的にもかなり厳しいことになるでしょう。
リスクとメリット、目先の効果と望みの違いを見極める
ナッツを毎日60g食べると男性の精子運動率が上がることは分かりました。
しかし妊娠や着床とは結び付かないという結果になりました。
この調査では200人ほどが対象なので結果は参考程度にはなりますが、努力のわりには結果があまり見込めないという見方があります。
一方で、健康なのになにをしても精子のコンディションが良くならない方なら、一考する価値があるかもしれません。
情報は大事ですが、いちばん大事なことは情報をどうやって読み取り、判断するかです。
「〇〇が身体に良い」「〇〇が妊活に良い」という情報は溢れていますが、それを鵜呑みにする前にチェックしましょう。
・信頼できる情報か(非ランダム化、ランダム化試験は信頼性が高い)
・調査対象人数(数千人以上の規模だと信頼が高いが、数百人程度でも参考になる)
・PubMed(米国国立医学図書館(NLM)が作成する、医学分野の代表的な文献情報データベース)、厚生労働省などの情報は信頼性が高い
慣れるまでは面倒かもしれませんが、情報を精査することは妊活に限らず、これからの人生でも大いに助けられます。
医療はリスクとメリット、どちらがより高いかで選びます。ぜひご自身で判断して、行動しましょう。
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