女性の妊娠率を下げる可能性も?新型コロナウイルス感染症と不妊の関係で分かっていること

妊活コラム

7月から再び新型コロナウイルスが蔓延しています。
毎年夏になるとコロナパンデミックを起こしていますが、今年は去年と異なり、マスク着用者が減り、ワクチン接種を何年も行っていない人が多いのが特徴です。前年とは比較にならないほど感染が広がるでしょう。
完全に避けることは難しいですが、妊活をする上ではできるだけ対策をした方が、妊孕力(妊娠する力)を温存できます。

ワクチンの普及で新型コロナに感染しても亡くなる確率は下がりました。
しかし替わって、高熱が収まったのに倦怠感や味覚臭覚障害、脱毛などが続く「コロナ後遺症」が社会問題化しつつあります。
男性がコロナ感染するとEDや精子減少のリスクがありますが、女性は現在のところ、生殖上は大きな後遺症は見つかっていません。

しかし、女性も罹患しないに越したことはありません。現状分かっている「妊活を妨げる後遺症」について紹介します。



女性はコロナ後遺症になりやすい

女性は男性に比べてコロナで亡くなる確率は低いですが、その代わりにコロナ後遺症になりやすいのが特徴です。
コロナ罹患後症状(いわゆる「コロナ後遺症」)は、WHOの定義ではコロナ罹患(と考えられる症状の)が治って3ヵ月以上経っても続く症状を差します。
製薬会社ジョンソン・エンド・ジョンソンが調査したデータがあります。女性健康研究所(Women’s Health)によると、男性に比べて女性が22%も後遺症を起こしやすいことが判明しました。

コロナ後遺症は200種類もあると言われていますが、最も多いのは倦怠感です。
身体がだるい、という軽いものではなく、少し動いただけで寝込む、中にはベッドから起き上がることもできないほど重度の倦怠感が続くことがあります。
世間ではすっかりコロナ禍明けという気分で感染対策を放棄した人が目立ちますが、その裏では今でも多くの若い女性が寝たきりになっています。

新型コロナウイルスが恐ろしいのは、風邪のように何度も感染して、そのたびに後遺症リスクがどんどん上がることです。
1回目の感染が軽くても、次に深刻な後遺症が起こることがあります。3回罹患すると、4割の人が何らかの後遺症を起こすことが分かっています。
コロナ罹患後にどんな後遺症が出るか、いつ治るのかは、誰も分かりません。治し方も対処療法しかなく、ほとんど効果が見られないこともあります。

対処としては、定期的な(最低限、1年1回)のワクチン接種が有効です。3回のワクチン接種で後遺症発生率を71.89%減少できることが判明しました。
しかし、コロナウイルスは免疫をすり抜ける能力が高いため、何度でも感染します。70%以上後遺症リスクを下げても後遺症は防ぎ切れません。

コロナ後遺症は強い倦怠感、味覚臭覚障害、不眠症、骨がもろくなる、脱毛など、200種類以上あると考えられています。
もし倦怠感の後遺症が出たら妊活どころか、今の生活もままなりません。時間が経てば徐々に回復する方も多いですが、回復まで半年から1年ほどかかることも珍しくありません。その間の妊活は諦めるしかなく、貴重な時間を奪われます。

コロナ感染はミトコンドリアを損傷させる可能性

なぜコロナ感染後に強い倦怠感が出るのでしょうか。
筋肉のミトコンドリアを損傷させることが判明しました。
コロナ後遺症患者25人と非後遺症患者21人を対象に、エアロバイクを15分漕ぐ運動テストを行いました。
筋繊維中のミトコンドリアについて比較検査を行ったところ、コロナ後遺症患者は運動によってミトコンドリアの機能が低下していることが分かりました。十分にエネルギーを筋肉に与えることができず、倦怠感が強く出るメカニズムが判明しました。

この調査では筋肉内のミトコンドリアですが、ミトコンドリアは卵子を含めて、すべての細胞にあります。
卵巣はACE2というコロナウイルスが侵入する受容体が多いため、大かれ少なかれ卵子への被害も否定できません。
コロナウイルスが卵子のミトコンドリアを損傷させるのかは、まだはっきりした結論は出ていません。しかし精子を造る能力低下が実証されているため、卵子も何らかの悪影響が出ていると仮定したほうが安全でしょう。

今こそ丁寧なコロナ対策を

非常に厄介なのは、新型コロナウイルスは発症2日前から、ウイルスをばら撒くことです。
風邪症状に気づいてからマスクをしても間に合わず、普段から付けて拡散を減らすことに努めなければいけません。

「コロナは風邪のように簡単に感染して、人生を狂わされる感染症」
という意識を、多くの方が共有することで被害を減らすことができます。
安全な妊活をするためにも外出時のマスク着用、手洗いや手指消毒、換気の徹底、できるだけ密集、密接、密閉空間を避ける対策を心がけましょう。
実費になりますが、ワクチン接種もご検討下さい。



参考サイト

保健指導リソースガイド 【新型コロナ】なぜ男性は女性よりも重症化しやすい? 後遺症は女性の方が多いという報告も
東京都医学総合研究所 新型コロナ後遺症における「労作後倦怠感」発症のメカニズム
nejm.org 「Postacute Sequelae of SARS-CoV-2 Infection in the Pre-Delta, Delta, and Omicron Eras」

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