現在、日本は深刻な人手不足が続いています。そのため多くの会社では従業員が長く働ける福利厚生制度を次々と出しています。
産前産後休暇は労働基準法で義務化されていますが、長期間の育休、介護休暇などを採用する企業が増えています。働き方も従来の時短勤務やフレックスタイム制だけでなく、テレワークなど新しい形態を採用する企業もあります。
まだ採用する企業は珍しいですが、近年は「出生サポート休暇(不妊治療休暇)」を採用するケースもあります。妊活で一番問題なのは仕事と治療の両立ですが、治療休暇があれば治療に打ち込める利点があります。
地方の方なら遠方の、技術が高い医療機関で治療を受けることも視野に入るでしょう。
ジャパネット、エムティーアイなど有名企業が不妊治療休暇を採用しています
不妊治療休暇は産休に比べるとマイナーな制度ですが、導入する企業が増えています。
通販大手のジャパネット、多くの方が利用している妊活アプリ「ルナルナ」の運営会社エムティーアイなどはメディアでも取り上げられました。
小田急電鉄は社員全員にポイントを付与し、そのポイントで不妊治療助成に充てることができるシステムを採用しています。
有名企業でなくても、中小企業でも同様の制度があるケースもあります。厚生労働省では「両立支援等助成金(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース)」という制度があり、中小企業に対して不妊治療や月経トラブルなど女性の健康課題に取り組む企業に対し、一定の助成金を支払っています。
人手不足はどこの企業も大きな課題で、従業員にはできるだけ長く働いてもらわないと経営が難しくなります。従業員確保は高い賃金を支払うことが大前提ですが、賃金で対策できる企業ばかりではありません。今後は「給与は高くないけど、不妊治療を含めて配慮できる、働きやすい職場」が増えていくかもしれません。
民間企業だけでなく、一部の公務員でも同様の制度があります。たとえば国家公務員は「出生サポート休暇」という制度があります。妊娠前、妊娠後の広範囲に適用される休暇制度で、不妊治療の採卵や移植などで休暇を取ることができます。
不妊治療休暇は「休職」「休暇」「働き方改革」の3パターンあり
一言で不妊治療休暇といっても、企業により内容はさまざまです。
休職
一定期間休職して、治療に専念できる制度です。
たとえばジャパネットでは、女性は最大1年、男性は最大1ヶ月の「不妊治療サポート休職制度」があります。タイミング法から体外受精まで、すべての治療に適用されます。
ただし休職中は無給で、在職中1回のみ使用できます。正社員は勤続年数1年以上、それ以外の雇用形態の方は勤続年数2年以上が条件です。
エムティーアイは最大2年休職が可能で、休職中は無給ですが社会保険料(個人負担分)は会社が全額負担します。
休暇
すでにある傷病休暇制度に、不妊治療や介護なども適用するケースです。従来の制度をそのまま使えるため、比較的多くの企業に採用されています。
通院日だけ半休、全休できる制度で、働きながら治療を続けやすくなります。休暇日のみ無給になるケースもありますが、働いた日数分の給与は支払われるため、生活が困窮する不安もありません。体力が続くならおすすめの方法です。
働き方改革
フレックスタイム制や時短出勤、テレワークなど、働く時間、働く場所を変える制度です。
どの制度が採用されているか、就職や転職を考えている方は必ず確認しましょう。
転職前に、「使いやすい制度」かご確認を
現在の職場では不妊治療が続けられないと感じるなら、転職も一つの選択肢になります。
しかし注意点もあります。不妊治療休暇を含め、休暇制度や働き方の変更は、制度があっても必ずしも使えるとは限りません。
残念ながら人員不足や社内トラブルなどが原因で、「制度がある」ことと、「実際に制度が使いやすいか」はイコールではありません。上司に報告するため、不妊治療を受けていることが社内に広まる可能性もあります。
そのため、事前にIndeedなど転職口コミサイトでリサーチすることをおすすめします。「不妊治療」「休暇」「理解」「両立」などのワードで検索すると探しやすいでしょう。
面接時に、この制度を利用した人はいるか、どれだけの人数の人が使ったかを聞くのも良いでしょう。「社員の健康支援やワークライフバランスに関する取り組みを伺いたいのですが」と切り出せば、自然な流れで尋ねることができます。
厚生労働省から「子育てサポート企業」認定をされた企業では、不妊治療休暇も積極的に採用する傾向があります。転職先の企業リサーチは、厚労省サイトで最新情報を確認しましょう。
参照:厚生労働省 くるみん認定、プラチナくるみん認定及びトライくるみん認定企業名都道府県別一覧
参考サイト
厚生労働省 不妊治療に関する認定制度(プラス認定)(令和4年4月~)
厚生労働省 両立支援等助成金(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース)
ジャパネット 幅広い選択肢からライフデザインをサポート 最大1年休職可能な「不妊治療サポート休職制度」新設
famione 【事例紹介】不妊治療と仕事の両立に関する福利厚生事例
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