体外受精でも自然妊娠でも、子供の能力に差はありません。

妊活コラム

体外受精と聞くと、人工的に子供を作る人造人間では?と勘違いされている方は今でも珍しくありません。
体外受精は、人体の中で起こる受精~成長のプロセスの一部を体外で担う治療法で、医療行為のひとつに過ぎません。骨折した人がギプスをはめて回復を促すことと、本質的には変わりません。
骨が折れて、そのまま放置することを推奨することはないでしょう。それなのに生殖に関してだけ医療行為に抵抗があるのは、「産まれてから後のことが分からない」からかもしれません。

体外受精児と自然妊娠児に差があるか、という研究は世界中で行われています。
オーストラリアの調査で、自然妊娠で生まれた子も、体外受精で生まれた子も、能力に差がないことが証明されました。

体外受精児も自然妊娠児も、成長・学習機能に差はなし

メルボルンがあるオーストラリア・ビクトリア州で、自然妊娠児と体外受精児の小学生(4~6歳児、7~9歳児)への大規模な能力調査を行いました。
結論から言えば、両者の能力に何ら違いはないことが証明されました。

出典:School-age outcomes among IVF-conceived children: A population-wide cohort study




調査対象は2005~2014年に、オーストラリア・ビクトリア州で生まれた単生児(双子など多生児以外の子)585,659人です。このうち11,059人が体外受精児です。
この調査はオーストラリア全国で実施される「オーストラリア早期発達国勢調査(AEDC)」と「全国統一学力診断テスト(NAPLAN)」を調査しました。

この調査を理解するには、使用されたAEDC、NAPLANを知る必要があります。
オーストラリアには「オーストラリア早期発達国勢調査(AEDC)」があり、小学校入学前の子は5つの診断を受けます。
∙ 体の健康と福利
∙ 社会的能力
∙ 精神的な成熟
∙ 言語力および認識能力
∙ コミュニケーション能力など
今回の調査では、この5つのうち2つの項目が一定以下の割合を調べました。

さらに入学後、一定期間経った児童、生徒にはNAPLANという全国統一学力診断テストを受けます。これは公立、私立関係なくすべての該当者が参加し、留学生、短期在住者も含めて必ず受けなければなりません。
科目は4科目で、国語(英語)の読解力、文法、筆記、算数の能力を測ります。
NAPLANは義務教育の間に合計4回受けますが、今回の統計では7歳児、9歳児の結果をもとに調査しています。

AEDCは子供の成長の発達段階を調査するもの、NAPLANは学力を調査するもの、と考えて良いでしょう。
これらのどちらにも差異はなかった、ということは体外受精児と自然妊娠児に何ら変わるものはないという証明になり、体外受精の治療をする上で安心材料になると思います。
1万人以上の体外受精児を含む、58万人以上の子供を対象にした調査なので、精度も非常に高いと言えます。
(調整リスク差など、専門的な数値は出典元でご確認下さい。)

この調査で分かったこと

子供の能力は体力や学習能力、他の人を思いやる心や協調性など、さまざまです。
今回分かったことは発達と国語、算数など学習能力で、協調性、一般的な知識、健康などを測ります。
健康面や社会性、学習能力など、子供が成長するために欠かせない能力を幅広く調査できたという点では貴重です。
先進国の大規模調査という点でも貴重で、今後の不妊治療の啓発に大きな弾みになるでしょう。

「体外受精で子供が授かることは分かるが、産まれてから後のことが分からない」
という不安は、どこかにあるかもしれません。今回の調査ではその不安を払拭できる大きな助けになるでしょう。
ただ、知っておきたいことは、自然妊娠でも体外受精でも一定確率で流産や早産、障害を負う子が生まれる可能性はあります。それは妊娠の宿命で、体外受精だから起こるわけではないことは、知っておくべきです。

体外受精は補助治療

骨折した人がギプスをはめて治療をするのと同じで、自然妊娠が難しいカップルが不妊治療を行うのは医療行為です。
身体の外で卵子を受精させるので人造人間を造るようなイメージがありますが、卵子も精子も両親のもので、受精から孵化までの成長は、太古の昔から続く生命の力です。
人間に生命を創り出すことはできません。体外受精はもとからある自然の生命力に、医療の力を添えているだけです。
もちろん、受精卵が成長するための環境を整えるのは大変難しく、培養士の技量や調整力、担当する病院の施設など、さまざまな要素が必要です。病院によって治療成績が異なるのは、これらの総合力で左右されるからです。

人間にできることは、生殖というプロセスを補助する役目だけです。
その補助には高い技術と厳重な設備が必要ですが、技術の粋を集めた治療であっても、生命誕生のサポートに過ぎません。繰り返しますが、人間に生命を造る技術はありません。できるのは生命誕生のサポートだけです。

もし人間に生命を造る力があれば、体外受精は100%成功するはずです。しかし実際は、どれだけ良い状態でも成功率は60%ほどです。
技術不足の面もあるかもしれませんが、生命誕生は人智を超えている証拠と考えられます。



参考サイト

Care Net「体外受精と自然妊娠、生まれた子に違いは?」

NSW education オーストラリア早期発達国勢調査(AEDC)

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