オメガ3脂肪酸を摂ると生殖寿命が延びる可能性

妊活コラム

海洋国家の日本は、伝統的に魚をよく食べる習慣があります。
しかし平成13年を境に魚食が減り続け、現在も減少中です。調理の面倒さ、肉に比べて価格が高いなど、魚より肉が好まれる傾向は強くなっています。

しかし、妊活をするなら魚食ぜひ取り入れたい食習慣です。
魚介類、特に青魚には血流改善、卵母細胞の質を上げるなど、妊活に良いとされる栄養素が豊富に含まれています。ぜひ日々の食卓に取り入れてみましょう。

魚を捌いて調理するのが理想ですが、調理が難しい方はサバ缶、いわし缶など缶詰を使うのもおすすめです。

魚の脂「オメガ3脂肪酸」のはたらき

魚の油は健康に良い、というのはよく知られています。魚の油、オメガ3脂肪酸(DHA、EPA)が動脈硬化を防ぎ、脳梗塞など心血管系の病気リスクを下げるのは、栄養学的にも解明されています。

マウスの動物実験ではありますが、オメガ3脂肪酸は、卵母細胞の質を上げることが判明しました。

出典:Prolonging the female reproductive lifespan and improving egg quality with dietary omega-3 fatty acids
Deepika Nehra 1, Hau D Le, Erica M Fallon, Sarah J Carlson, Dori Woods, Yvonne A White, Amy H Pan, Lankai Guo, Scott J Rodig, Jonathan L Tilly, Bo R Rueda, Mark Puder

マウスの生殖機能が加齢に伴い急速に低下する通常の時期にオメガ 3 脂肪酸を豊富に含む食事療法を短期間開始しただけでも、卵母細胞の質が改善しますが、オメガ 6 脂肪酸を短期間摂取すると卵母細胞の質が非常に悪くなります。

脂質の種類はとても多く、種類によっては身体に害を与えやすいものがあります。
脂質には大きく分けて「飽和脂肪酸」「不飽和脂肪酸」の2種類があり、魚油は不飽和脂肪酸というカテゴリーに入ります。
不飽和脂肪酸にもオメガ3脂肪酸(魚油、アマニ油など)、オメガ6脂肪酸(サラダ油、オイル漬けのツナ缶など加工食品)、オメガ9脂肪酸(オリーブオイル、紅花油など)など、さまざまな種類があります。
中でもオメガ3脂肪酸は動脈硬化を防ぎ、健康寿命を伸ばす働きが知られています。

なぜオメガ3脂肪酸が卵母細胞の質を向上させるかは分かっていません。マウスの実験なのでヒトに直接当てはまるか確実ではないですが、魚食が妊活を後押しする可能性はあります。

併せて、オメガ6脂肪酸を含む食品の食べ過ぎは、なるべく控えましょう。しかし全く食べないと健康を損ねます。
オメガ6脂肪酸のリノール酸は必須脂肪酸という、食品でしか摂取できない大事な栄養素です。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2020年版」では、1日8~11gの摂取を推奨しています。
普通の食事をすれば不足することはありませんが、この数値より減らすのは止めましょう。



過剰な体重を減らし、体温を上げる作用も

妊活で大切なことの一つは、冷え予防です。体温が低すぎると血流が悪化し、さまざまな悪影響が起こりやすいと言われています。
肉や乳製品に含まれる脂、飽和脂肪酸は、過剰摂取すると動脈硬化を引き起こします。体重増加や血流の悪化を招き、冷えを悪化させるリスクを高めます。

動物実験では、魚脂を摂取すると体脂肪の蓄積を減らす効果があることが実証されました。さらに血流が改善し、体温上昇を促進することが分かりました。

肉や乳製品は良質なタンパク質で、適量に摂取することは大切です。牛乳は低脂肪乳や無脂肪乳に切り替える、バターは風味付け程度の必要最低限に控える、肉はしゃぶしゃぶにして脂を落とすなど工夫すると、飽和脂肪酸の過剰摂取を防ぎます。

できれば刺身が理想!オメガ3脂肪酸は熱に弱い

オメガ3脂肪酸は「熱に弱い」という弱点があります。
魚は、できれば刺身など生で食べるのが一番効率よく摂取できます。ただし生食は食中毒や寄生虫リスクがあるので、できるだけ新鮮なものを信頼できる店で購入しましょう。
サバなど青魚はアニサキスが多いので、冷凍加工されたものを買うのもおすすめです。

とは言っても毎日寿司や刺身ばかり食べるわけにはいかないでしょう。漁港が近い地域でなければ価格も高いので、あまり現実的ではありません。
魚は生にこだわらず、焼く、煮るなどさまざまな調理法で美味しく食べましょう。

サバ缶、いわし缶などは手軽にオメガ3脂肪酸が摂取できます。しかしオイル漬けの魚缶は注意が必要です。
水煮缶やオリーブオイル漬けなら問題ないですが、大豆油などサラダ油に漬けた魚はオメガ6脂肪酸も豊富なので、せっかくの効果が相殺されかねません。
魚の缶詰は水煮や味噌などで味付けしたものを選びましょう。サバやイワシなど、調理が面倒な青魚も缶詰やレトルトパウチなら気軽に摂取できます。
そのまま食べるのも良いですが、ほぐしてパスタの具、おにぎりの具、サラダの付け合わせなどにすると飽きずに美味しく続けられます。缶の汁ごと鍋に入れて味噌汁にすると、ボリュームある汁物になります。

オリーブオイル漬けの缶詰は近年珍しくなりましたが、大手コンビニで入手できます。続けやすい方法で魚食を増やしていきましょう。



参考サイト

日本脂質栄養学会 食事性のオメガ3脂肪酸は、女性の生殖寿命を延ばし、卵子の質を改善する

京都大学 魚油摂取は交感神経を介して、「脂肪燃焼細胞」を増やす-~

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