2020年末から実用化された新型コロナウイルス用ワクチンは、夥しい数の人の命を救い、症状軽減に役立っています。
現在は接種が有料になりました。重症化を防ぎ、後遺症の発症率を下げることを考えると、有料でも接種して感染に備えることは引き続き有効な感染対策です。
今期は5種類のワクチンがあり、国産ワクチンや従来型、次世代型m-RNAワクチンなど、選択肢が増えました。今回はすべてJN.1株対応です。
2020年から主流のm-RNAワクチン(ファイザー・モデルナ)
2020年の接種から引き続き、ファイザー(コミナティ筋注シリンジ12歳以上用)、モデルナ(スパイクバックスTM筋注)から最新版のワクチンがあります。
特にファイザーは注射と一体型で流通しているため、地域の小さなクリニックでも扱いやすいワクチンです。
m-RNAワクチンでは、ウイルスのスパイクと呼ばれる突起を作る設計図(m-RNA)を体内に注入し、細胞に突起だけ作らせます。免疫細胞がその突起をもとに抗体を作り、ウイルス感染に備える仕組みです。
コロナウイルスはスパイクを細胞のレセプターという場所に引っ掛けて細胞内に侵入します。コロナワクチンではあらかじめ免疫機構にコロナウイルスのスパイクだけ認知させて、本物のコロナウイルスが侵入した時にいち早く攻撃できる体制を整えます。
作るのはウイルスの突起だけなので、感染のリスクは全くありません。
m-RNAは非常に壊れやすく、すぐに壊れてしまいます。人体ではRNAから遺伝子情報を保管するDNAに情報が書き替えることはできません。
初の純国産!第一三共のm-RNAワクチン
今季から国産ワクチンが認可され、国産ワクチンが選べるようになりました。
第一三共のm-RNAワクチン「ダイチロナ筋注」は開発から製造まで日本製の、初の純国産m-RNAワクチンです。
ダイチロナの基本的な内容はファイザー、モデルナと同じです。特徴はスパイク(突起)の受容体結合部位という、細胞に取り付く部分の設計図をm-RNAに組み込んでいるところです。
効果、副反応は従来のm-RNAワクチンとほぼ同じとされています。
従来技術で作られた不活化ワクチン「ヌバキソビット」
m-RNAワクチンは副反応が強く、新しい技術なので忌避する方もいます。
Novavax社(日本での製造は武田薬品)の「ヌバキソビッド筋注1mL」は不活化ワクチンという、従来の技術で作ったコロナワクチンです。
不活化ワクチンとは病原体から感染する力を消した(不活化)ものを原材料として作られたものです。インフルエンザワクチン、4種混合、HPVワクチンなど、誰でも一度は接種したことがあるワクチンも不活化ワクチンです。「組み換えタンパクワクチン」と呼ばれることもあります。
m-RNAワクチンは自分の細胞に標的(コロナウイルスの突起部分)を作らせますが、ヌバキソビットはあらかじめ作った標的を注射するのが特徴です。効果は他のワクチンとほぼ同等です。
副反応はm-RNAワクチンに比べて軽いと言われていますが、副反応の重さには個人差があります。不活化ワクチンに欠かせない免疫活性成分が原因で副反応を起こすこともあります。
次世代m-RNAワクチン「コスタイベ筋注」
m-RNAワクチンも新技術が開発されています。今回から、世界初の次世代m-RNAワクチンが登場しました。
ファイザー、モデルナのm-RNAワクチンは、m-RNAだけを使います。
Meiji Seikaファルマが製造した「コスタイベ筋注」は、m-RNAにレプリカーゼという酵素の情報を組み込んだ、次世代型のm-RNAワクチンです。自己増幅型mRNAワクチン、レプリコンワクチンと言われています。
レプリカーゼはRNAのレプリカ(複製)を作るために欠かせない酵素です。
次世代m-RNAワクチンは、コロナウイルスの突起とレプリカ―ゼを作る情報を書いたm-RNAを注入します。
m-RNAを読み込んだ細胞がこの2つを作り、レプリカ―ゼのはたらきで何度もコロナウイルスの突起を作り、免疫に渡します。何度も抗原を作るため「自己増幅型」と言われています。
しかし、m-RNAはとても脆く、やがてレプリカ―ゼは消滅します。投与後8日程度まで働いた後に徐々に壊れ、21日前後で消滅することが分かっています。
コスタイベ筋注は1バイアル(1瓶)16人という、集団接種向けのワクチンです。そのため打てる医療機関が非常に少ないのが特徴です。
一部にレプリコンワクチンを打つとシェディング(伝播)なる症状が出るという噂がありますが、物理的にありえません。レプリコンワクチンで作られるのはコロナウイルスの突起だけで、感染性がないためです。
一時期はコロナウイルスを摂取すると5Gに接続するという噂がありましたが、そのようなことは当然ながら起きませんでした。一見すると信憑性があるように見える話ですが、中身は5Gデマと大差ないと考えます。
もちろんワクチンも副反応があり、時に重篤な症状が現れることもあります。
しかし新型コロナウイルスがこれだけ社会に蔓延している今、リスク覚悟でワクチンを打って重症化や後遺症リスクを下げるか、ウイルス感染するかの2択しかありません。
ワクチンで重篤な副反応が出たら、予防接種健康被害救済制度が適用されます。しかし新型コロナに感染しても何の保証もなく、何万円もする抗ウイルス薬や、後遺症で長い間通院する可能性があります。
ワクチン接種は任意ですが、現状を把握した上で決めると良いと思います。
参考サイト
日経バイオテク 第一三共が開発した新型コロナワクチン「ダイチロナ」とは
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