「着床障害にはこの治療を」
「体外受精の成功率を上げるために、オプションに〇〇を」
など、世の中には不妊治療に関する情報があふれています。
効果がある程度期待できるものもあれば、効果が未知数なものもあります。
特に妊活は大金が動くので、クリニックが提示するオプション療法でも信頼できるとは限りません。
最先端すぎる治療で効果が未知数、というケースもあるからです。大金をかけても効果が高いとは限らないのが、日本の医療です。
ここでは、医療知識がない方でもできる医療情報の読み方をご紹介します。
公的機関の情報か?
まず、その情報は信頼できる情報源かどうかを調べます。
医療情報を得る際は、病院の公式サイトや公的機関の発表、専門医の意見など、信頼性の高い情報源に基づいたものを参考にしましょう。
政府(厚生労働省)のドメイン「go.jp」や、大学など高等教育機関のドメイン「ac.jp」なら、比較的信頼できる情報が得られるでしょう。
検索で「不妊治療 go.jp」「不妊治療 ac.jp」など、検索ワードにドメインを入れると、信頼性の高い情報が上位に出やすくなります。
日本生殖医学会など、学会の情報も信頼性が高い資料です。学会は公的機関ではありませんが、治療の基礎知識や正しい治療法を挙げています。
医療学会には一般人の方向けの情報を公開していることが多く、治療法などを分かりやすく紹介しています。
ただし、学会は誰でも名乗れるので、中には信頼度が低い、金銭目的の詐欺集団もいます。素人でもできる見分け方は、日本を代表する団体に加盟しているか調べてみることです。
日本学術会議の学会名鑑(https://gakkai.scj.go.jp/)、日本医学会分科会一覧(https://jams.med.or.jp/members-s/index.html)などに記載された学会なら、まず信頼できるでしょう。
エビデンス(科学的根拠)の確認を
医療分野は科学の領域です。
科学で最も大事なのはエビデンス(科学的根拠)。この治療はどれだけ効果があるのか、大人数のデータをできるだけ誤差なく比較することが科学的根拠につながります。
エビデンスをもとに書かれた文章が論文ですが、論文は査読というプロの審査を受けて初めて価値がでます。
査読に合格した論文は医療ジャーナルに掲載され、世界中の人が読むことができます。
内容は英語で、専門用語が多いので素人が読むにはあまり向きません。翻訳ツールを使えば、何となく程度なら理解できるでしょう。
医療ジャーナルも信用が高いもの、低いものがあります。中でもPubMed(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/)は査読が厳しく、信頼度が高いと言われています。
日本語の論文を中心に読みたいときは、科学技術振興機構が運営するJ-Stage(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja/)などでも探すことができます。
ただ、これらに掲載されている論文のすべてが信憑性が高いとは限りません。
どの程度信頼できるかの指標(エビデンスレベル)もありますが、素人では判断が難しいのが現状です。
より情報を精査したい方は「エビデンスレベルピラミッド」をもとに確認してみましょう。
なお、医師の個人的な見解は、エビデンスレベルでは最低ランクになります。プロの医師であっても、個人的な見解は科学技術の世界では最も信頼できない情報という扱いです。
客観的にデータを揃え、比較すること、再現性があることが重視されるのが医療の世界です。
最先端医療は効果が未知数です。よく考えた上でご検討を
世の中は「金額が高いものは効果が高い」ことが大半です。
しかし、日本の医療に限れば、保険適用される標準治療がいちばん効果が高いのが特徴です。
安価な価格で世界最高の医療が受けられるのは、日本の良いところです。
しかし、標準治療ではカバーできない疾患はたくさんあります。
不妊治療では、着床不全や不育症などは標準治療が少なく、打つ手が少ないのが現状です。
近年はiPS細胞を使った子宮内膜の再生など、目新しい技術が次々と開発されています。しかし、最先端の技術のため非常に高額で、しかも効果は未知数です。
動物実験などである程度効果が見込めても、いざ人体に使うと効果がない、という可能性もあります。
不妊治療でオプションの自費治療を加えることがあると思います。
自費治療はある程度エビデンスが揃っているものから、効果が未知数の治療まで玉石混交です。
できるだけエビデンスレベルが高い資料を確認した上で、
「ほかに打つ手がないから、効果が未知数でも治療を受けたい」
「ここで受けないと後悔する」
という覚悟があれば、最先端治療を受けても良いかもしれません。
繰り返しになりますが、高額だから効果が高いとは限らないのが医療の世界です。
この点だけでも意識すれば、無限にお金を使い資産を失うリスクを減らせます。
参考サイト
ネットdeカガク 論文の種類 ジャーナル、総説(レビュー)、速報(レター)の違い
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