不育症とは、妊娠はしても流産や死産を繰り返し、赤ちゃんを授かることが難しい症状です。
一般的に、2回以上の流産、死産を経験した場合、不育症の可能性があると考えます。すでにお子さんがいるご家庭でも2回以上流産や死産を繰り返す場合は、不育症とみなし検査、治療の対象になります。
(日本産婦人科学会では、「異所性妊娠(卵管などに着床して育つこと)、絨毛性疾患(胞状奇胎)、生化学的妊娠は流産回数に含めません」と規定しています)
不育症の方は日本で約3万人いると言われています。
患者数は決して少なくありませんが、専門的な検査や治療ができる医療機関は限られています。特に医療機関が少ない地方では、適切な診療を受けられずに苦しんでいる方がたくさんいます。
厚生労働省の「不育症相談窓口」にある相談窓口へ
すでに医療機関で不妊治療を受けている場合は、同じ病院で基本的な不育症検査や基礎的な治療を行うことはできます。
しかし原因が不明なことも多く、偶発的な流産や原因不明が65.3%という統計もあります。
すでに医療機関に通院している方も、そうでない方もぜひ利用を検討したいのは、厚生労働省が公開している不育症相談窓口です。
すべての都道府県に最低1機関は相談窓口があり、電話や対面、メールなどで相談できます。
全国の不育症相談窓口一覧でご確認下さい。
不育症相談窓口一覧はこちら
相談者は助産師?看護師?自治体により窓口の運営は大きく変わります
注意したいのは、都道府県、市によって相談体制が異なるところです。
相談窓口は病院のこともありますが、専用窓口、医師会会館、保健所、男女共同参画センターなど自治体によって多種多様です。
相談対応する方も産婦人科の医師が対応する自治体もありますが(兵庫県など)多くの自治体は看護師、保健師、助産師が担当します。
兵庫県のように「不妊症看護認定看護師資格」取得者の看護師が対応する自治体もありますが、その場で医学的な判断ができないことが多いことは了承の上、ご相談下さい。
不妊相談と兼任している自治体も多いため、不育症の対応は大きく変わるかもしれません。
医療機関以外の相談窓口では医学的なアドバイスよりも
「どこで検査、治療を受ければ良いか」
「利用できる助成について」
など、不育症サポートに関することを尋ねると良いでしょう。
ただ辛い、という感情を吐露するだけでも心が軽くなります。
メール相談やオンライン相談ができる自治体もあるので、まずは相談予約することをおすすめします。
すでに不育症検査や治療を行っているが、なかなか成果が出ないときも相談役になります。
不育症の原因と治療
不育症の原因は非常に多く、判明しているだけでも多くの理由があります。
・血液凝固異常(抗リン脂質抗体)
・甲状腺ホルモンの分泌異常(橋本病など)
・子宮の奇形
・赤ちゃんの染色体異常が続いた
・(親側の)染色体異常
赤ちゃん側の染色体異常は一定確率で発生します。自然妊娠の場合は避けることはできません。
体外受精では受精卵着床前検査で判明しますが、この検査を行うと体外受精の費用は保険適用されず、全額自費になります。生命倫理に反するという批判もある検査であることは知っておくべきでしょう。
親の性染色体異常が子に伝わり、流産率が上がることがあります。性染色体が異常でも生きていく上では問題ないことがあり、不自由なく生活することができます。しかし生殖能力だけが障害が起こることがあります。
両親とも遺伝子検査を受け、もし異常が見つかれば体外受精で着床前検査を受けるべきでしょう。本来、着床前検査を受けるべきケースはこのような遺伝子疾患に苦しむ方たちです。
血液凝固異常は、血液が固まりやすく血栓や流産、死産を起こすリスクが高い体質です。
不育症の主要な原因の一つで、治療法も確立しています。低用量アスピリンの服用とヘパリンの自己注射で、出産までの赤ちゃんの生存率を1.7倍まで上げることができます。
合併症リスクも8倍も下げることができるため、煩わしいヘパリン自己注射も報われるでしょう。
甲状腺ホルモンの不足は身体のだるさ、異常な冷え、耳鳴りなど様々な症状を引き起こしますが、流産する確率も上げてしまいます。
甲状腺ホルモン値を測り、適量のホルモン剤を服用して補うことで改善します。妊娠後は定期的な測定と調薬が必要ですが、調整さえうまくいけば大きな副作用もなく、安心して治療ができます。
子宮の奇形は手術が必要なケースもありますが、特に問題ないことも多く、経過観察で不妊治療を受けることも珍しくありません。
不育症検査と治療の内容を大まかに知っておくだけでも、相談しやすくなるでしょう。
現状では完全に克服、とまでは行かないものの、元気な赤ちゃんを出産できるケースは増えています。不安払しょくのためにも、一度は相談窓口で相談しても良いと思います。
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