世界最強の感染力がある「麻疹」が世界的に蔓延中!ただちに抗体を確認しましょう。

妊活コラム

現在、日本各地で麻疹(はしか)の患者が報告されています。麻疹は妊娠中にはワクチン接種ができないため、妊活中の今こそ対策を検討すべき感染症です。
将来の妊娠や赤ちゃんの健康にも関わるため、妊活中の方にもぜひ知っておいていただきたい内容です。

以前『今すぐ麻疹抗体の確認を!妊活、妊娠中に麻疹が起こす悪影響は?』で紹介しましたが、啓発も兼ねて改めて麻疹の脅威について紹介します。

1人の患者が最大18人に感染させる、最強の感染力

麻疹ウイルスは空気感染ができる、数少ないウイルスです。
新型コロナウイルスなど他のウイルスは、微細な唾液に乗って空中を漂い他人に感染させることはできますが(エアロゾル感染といいます)水分が乾燥すると感染力を失います。
麻疹ウイルスは水分がなくても、感染力を保持しながら空中を漂います。麻疹患者が立ち去った空間に数時間後、他の(抗体を持たない)人が来るだけで感染が成立します。
1人の患者が免疫を持っていない人に何人感染させるかという数値を基本再生産数といいます。麻疹は基本再生産数(R0)12~18という、桁違いの感染力があります。
インフルエンザの基本再生産数は2~3であるのを比べても、約10倍も感染力があります

麻疹のニュース報道で、患者が〇月〇日〇〇時にこの場所にいた、〇〇時にこの公共交通機関に乗った、という情報が流れているのを見たことがあるでしょうか。これは患者がその場にいただけでも麻疹ウイルスを伝播してしまうためです。
麻疹は5類感染症で、診断した医師が保健所に報告する義務があります。保健所が感染者の全数把握と情報公開を行い、その情報の一部がニュースなどで報道されることがあります。

麻疹は発症「4日前」から発症後4日ごろまで、ウイルスを吐き出します。
発症したと気付いた時にはすでに何日間も麻疹ウイルスをばら撒いてしまったおそれがあります。
空気感染するため、通常のマスクや手洗いで完全に防ぐのは難しいとされています。

麻疹は2回のワクチン接種で強い免疫が付きます

麻疹は、かつて「命定め」と呼ばれた感染症でした。幼少期に麻疹に感染して、命を落とす子がたくさんいました。その代わりに生き延びた子は高い免疫が付きます。
ただし、感染すると後遺症で肺炎や、亜急性硬化性全脳炎という指定難病を発症することがあります。寝たきりになるほど重い疾患なので、「感染して免疫をつける」という考え方は非常に危険です。
現在でも麻疹の特効薬はなく、1,000人に1人は亡くなる病気です。

麻疹は2回のワクチン接種で95%の方が免疫を持ちます。免疫は長期間続きますが、個人差があります。
ワクチン接種を2回済ませている方、麻疹の感染歴のある方は抗体がある可能性が高いのですが、近年は新型コロナウイルス感染症で免疫を一時的に失うケースがあります。

・ワクチンを2回打った記録がない
・麻疹に感染したことがない
・最近、コロナ感染した

以上に該当する方はぜひ、麻疹の抗体検査を行いましょう。
まれにワクチンを接種しても免疫が付かない方がいます。できればワクチン接種をした方も、一度は抗体検査をしたほうが安心です。

近年はワクチン不足なので、追加接種よりも抗体検査をおすすめします。検査の料金などは内科でご相談下さい。
不妊治療の検査でも、カップルの麻疹抗体を確認します。



今までのワクチン接種が無駄に?!恐ろしい麻疹の後遺症

麻疹感染の後遺症で肺炎や脳炎が起こることがありますが、多くの方に残る後遺症に「免疫健忘」があります。この後遺症こそ、妊活の大きな妨げになります。

麻疹ウイルスは白血球の記憶B細胞、記憶T細胞を攻撃します。
これらの白血球は今までに出会った病原菌やウイルスの記憶を持ち、次に現れたら速やかに反撃の合図を出す役目があります。しかし麻疹ウイルスで弱った記憶細胞は合図を出すことができず、さまざまな感染症にかかりやすくなります。これを免疫健忘といい、今まで接種したワクチンの効果が低下します。

免疫健忘はおおよそ2~3年で治ると言われますが、その間はあらゆる感染症リスクに晒されます。妊活中に麻疹感染を避けたいのは、もし妊娠しても免疫不足で、母子ともに危険な病気に感染するリスクが上がるからです。

麻疹ワクチンが打てるのは妊活中だけ!

麻疹ワクチンは生ワクチンのため、妊娠中は接種できません。接種できるのは妊活中だけです。いつ妊娠するか分からないので、麻疹抗体がない方は早めに接種しましょう。
ワクチンで免疫を付ける以外に、麻疹の感染から逃れることはできません。

しかし、麻疹ワクチンは深刻な品不足で、気軽に接種することはできません。
妊活中の方におすすめしたいのは、トラベルクリニックや税関で接種できる新三種混合ワクチン(MMRワクチン)です。
麻疹、風疹、おたふく風邪を防ぐワクチンで、EUで承認され普及しているものの、日本では未承認です。トラベルクリニックでは、MMRワクチンを海外から輸入して接種しています。
自由診療になるため、予算があれば比較的接種しやすいワクチンです。最近は接種希望者が増えているため、必ず事前に予約をしてから受診しましょう。

もし重い副作用が出ても補償制度があります。
国の医薬品副作用被害救済制度は適用外ですが、MMRワクチンは輸入ワクチン副作用被害者補償制度(輸入商社による民間の補償制度)の対象になります。
麻疹ワクチンにも副作用はありますが、麻疹感染と比べてどれほどのリスクがあるか、よく検討してみましょう。



参考サイト

日本感染症学会 感染症クイック・リファレンス「69.麻疹」

難病情報センター 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)(指定難病24)

Wikipedia 新三種混合ワクチン

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