若い世代ほどメンタルにダメージが…妊活とメンタルヘルス

妊活コラム

妊活中、特に不妊治療中はストレスの連続です。度重なる通院、痛い処置、ホルモン剤などの薬剤は心身に大きな負担がかかり、精神的に追い詰められるように感じます。これだけ努力しているのに妊娠に至らずに月経が来るのは、とてつもないストレスです。
適切な不妊治療を受ければ妊娠する可能性を上げることはできますが、100%妊娠することはできません。最も妊娠率が高いのは体外受精ですが、どれだけ条件が良くても妊娠率は48%ほどと言われています。

生殖にかかわる「ままならないこと」へのストレスは計り知れません。いつ妊活が終わるかは誰にも分からず、それがますます苦しむ原因になります。
苦しみに溺れないためにも、知識と覚悟は大きな助けになるでしょう。

不妊治療をする女性の54%が、軽度以上の抗うつ状態

国立成育医療研究センターの調査によると、体外受精などの高度不妊治療を受ける女性は、治療開始初期(これから治療を始める方~採卵2回目までの方)の段階で、54%の方が軽度以上の抑うつ症状を抱えていることが明らかになりました。(うち軽度32%、中等度17%、重度5%、きわめて重度1%)
抗うつ状態まではなくても、不安の高まりは39%に達していることも判明しました。
特に若い世代、20代女性でメンタル不調や生活の質(QOL)の低下が顕著でした。
海外の先進国でも同様の調査結果がありますが、日本でも不妊治療中の多くの女性が苦しみ、抗うつ状態に陥っていることが分かりました。

苦しいのは自然なことと捉え、対策を

妊活ストレスは、身体的・経済的な負担だけではありません。
「妊娠できない事実」に対する自己否定感、将来への不安など、心にも大きなストレスを与えるものです。54%もの女性が抗うつ状態になるほどの、根源的なストレスです。

まず知っていただきたいのは、苦しさを感じること自体は異常ではなく、ごく自然な反応です。
治療を頑張ることはもちろん大切ですが、頑張って妊娠が確実にできるとは限らない、ということは覚悟しておくべきです。
不妊治療は妊娠率を上げることはできます。しかし100%確実に妊娠できるものではありません。人間は他のほ乳類に比べて妊娠率が極端に低く、何度もタイミングを取らないと妊娠しにくいのです。

病気は罪ではありません。大切なのは、自分を責めず、早めに信頼できる医療者や支援機関に相談することです。不妊治療の病院の中にはカウンセリングを行う施設もあります。日常生活もままならないほど荒んでいたら、一度はカウンセリングを受けてみるのも良いかもしれません。
心のケアも妊活の一部です、メンタル面へのサポートを積極的に活用する姿勢が、治療の中で自分を守る鍵となります。



あらかじめ、期間を区切る覚悟も

数年前から体外受精など高度不妊治療も保険適用され、比較的低予算で不妊治療を受けることができるようになりました。しかし保険適用は回数制限があり、無尽蔵にできるわけではありません。
不妊治療は永遠に続けることは難しく、長く続ければ必ず妊娠できるとは限りません。不妊治療は妊娠しない限り終わりが見えませんが、だからこそ「期間を区切る」ことを意識しましょう。
どれだけ苦しくても、期間が決まっていれば耐えやすくなります。腹をくくって耐えるためにも、期間を区切ることは大切です。お子さんが産まれてもそうでなくても、あなたの人生はこれからも続きます。

悲観は気分、楽観は意思

フランスの哲学者アランは、「悲観主義は気分によるものであり、楽観主義は意思によるものである」という言葉を残しています。
妊活に限らず、世の中にはネガティブな話題で満ち溢れています。放っておくとネガティブな情報ばかりが取り込まれ、どんどん悲観的になりがちです。うまくいかない、という事実も気分が悲観的になる要素でしょう。
前向きな気持ちになるためには、意識してポジティブな話題や心がけに焦点を当てる習慣が必要です。楽観主義は意思の力で育むものです。
妊活には関係のない日常の小さなことに焦点を当てる、人に親切にするなど、前向きになるように働きかけると、不思議と心も軽くなります。

日本は医療大国で、誰でも不妊治療を受けることができます。特に都市部は世界最高峰の高度な治療を受けることができます。治療を受けることができる、ということは、それだけでも大変恵まれているのです。

望みが叶っても叶わなくても、妊活は大きな精神的な負担になります。特に不妊治療を始めた直後は、思った以上に精神的負担を感じる方も少なくありません。多くの女性が抗うつ状態になるほど辛い状況に陥るのは、調査で実証されました。だからこそあらかじめ期限を区切る、自身が前向きに過ごせるよう意識をポジティブに向ける、その上でパートナーや周囲の人と辛さ苦しさを共有することで乗り越えていくことができるでしょう。



参考サイト

国立成育医療研究センター 体外受精などの高度不妊治療を受ける女性の約半数が 治療開始初期の段階で、すでに軽度以上の抑うつ症状あり

六本木レディースクリニック 体外受精の成功率は?年齢別の確率や妊娠に導くポイント

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