終末糖化産物(AGEs)は男性不妊を引き起こす可能性

妊活コラム

最近、「終末糖化産物(AGEs)」という言葉を聞く機会が増えたかもしれません。
AGEsは糖化ストレスの原因物質です。シワや老化の原因になる物質といわれ、美容業界では有名になりました。

しかし実は健康面にもさまざまな悪影響を与えることがあることが知られています。
老化物質”として知られるAGEsが、実は男性不妊とも関係していることが判明したのです。
特に糖尿病の方はAGEsが蓄積しやすいので、適切な血糖コントロールを続け、適度な運動や食事を意識して行いましょう。

終末糖化産物(AGEs)とは?

終末糖化産物(AGEs:Advanced Glycation End Products)とは、消費し切れない過剰な糖が身体のタンパク質に取り付き、劣化(=老化)した状態を差します。
細胞を酸化ストレスに晒し、劣化や炎症を引き起こします。

AGEsはパンやクッキーなど焼き菓子がきれいな茶色に焼けた状態と同じメイラード反応です。AGEsが過剰に増えると肌の劣化や血管の劣化による動脈硬化、白内障や認知症、骨をもろくするなど、多くの病気を引き起こします。
特に、糖尿病の方はAGEsが体内に蓄積しやすく、体内のあちこちで炎症を起こします。さらに動脈硬化などが悪化しやすくなり、EDの原因になります。

AGEsは甘いものの食べ過ぎなどで体内に発生しやすくなります。甘いジュースやお菓子はもちろん、大盛りごはんやラーメンの替え玉、うどん、食べ放題に日常的に通うなどの習慣がある方は、特にAGEsの蓄積リスクが高まります。

AGEsは調理でも増え、調理法でも大きく変わります。
鳥の胸肉による実験では生肉で1と仮定して、1時間煮ると約1.5倍、電子レンジで5分加熱すると約2倍、15分焼くと約7.6倍、8分揚げると約9.6倍のAGEsが生成されます。

こんな話を聞くと焼き菓子や揚げ物を食べにくくなるかもしれませんが、それは誤りです。食品から取り込まれて体内に長く留まるAGEsは7%ほどと言われています。焼き菓子や揚げ物は少量味わう程度に留めれば、特に問題は起こらないでしょう。
ただ、毎日過剰に摂取する習慣は改めましょう。



精巣にAGEsが蓄積すると男性不妊が悪化するおそれ

AGEsの蓄積が老化を進めることは分かっていましたが、動物実験で精子の数を減らし、運動量を低下させることが判明しました。
糖尿病のマウスの精巣にAGEsが蓄積され、炎症を引き起こしていることが不妊の原因でした。炎症を起こす精巣では精子数が減り、運動機能も劣化することが証明されました。

この実験ではAGEsの働きを阻害する薬剤を投与することで、糖尿病マウスの精巣炎症を和らげ、精子の機能低下を防ぐことが証明されました。
いつかは人間への医薬品として実用化されることが期待できますが、いつ実用化されるか分かりません。
いま男性不妊で苦しんでいる方、特に糖尿病や、暴飲暴食の習慣がある方、喫煙者はAGEsをできるだけ作らないための生活改善を行いましょう。

AGEsを増やさない対策を!

AGEsを過剰に増やさない対策は、糖尿病の改善策と同じです。

・ベジファースト(野菜から食べる)食習慣
・低GI(血糖値が上がりにくい食品)を積極的に食べる
・適正なカロリー摂取と栄養バランス
・食後の運動
・禁煙

これらを実践するだけで、ある程度は改善します。原因不明の男性不妊で悩む方は、今一度生活習慣を見直しましょう。
特に未治療の糖尿病、糖尿病予備軍の男性は、早めに糖尿病外来などで指導を受けるべきでしょう。糖尿病外来では投薬だけでなく、食事指導や生活指導も併せて行います。健康診断で血糖値の要検査を指摘されているなら、できるだけ早めに内科(できれば糖尿病科)を受診して下さい。

AGEsを増やしにくい食べものは、血糖値が上がりにくい全粒粉、玄米などの炭水化物です。血糖値の上昇をゆるやかにすることで、AGEsの過剰な発生を抑えられると言われています。

食事は野菜から食べ、次におかず、最後に炭水化物という順で食べるベジファーストが血糖値上昇をゆるやかにするとされています。糖尿病の食事指導でも推奨されている食べ方で、手軽に始められます。

調理法は、できればAGEsを作りにくい蒸し料理、茹で料理がおすすめです。余分な脂を取り除けるのでカロリーダウンも狙えます。いま流行のセイロ蒸しは、慣れると簡単に調理できるのでおすすめです。
焼き料理、揚げ物は回数を減らすと良いでしょう。揚げ物はなるべく控えましょう。

AGEsは食後1時間ほどで産生しやすいと言われています。
食後血糖値が上がる時間帯と重なるので、食後30分後くらいから30分ほど運動するのが理想です。食べたエネルギーをその場で消費できるので、過剰な血糖値上昇を抑え、AGEs生産も減らせます。

これらを続けると血糖値が安定し、AGEsの生成が抑えられます。糖尿病(予備軍含む)の改善にもつながり、健康面でも大きく寄与するでしょう。

最後になりましたが、もし男性不妊の検査を終えていないなら、すぐに泌尿科で検査を行いましょう。
男性不妊であっても一時的なもの、治療で完治する症状もあります。遺伝的原因で不妊が治らないケースもあります。
AGEs対策は、きちんと検査をした上で行いましょう。



参考サイト

メディカルトリビューン 終末糖化産物が糖尿病男性の不妊に影響

大学プレスセンター 昭和大学の研究チームが、老化物質AGEが精子数の減少と運動機能の低下に関わることを実証

omron vol.139 老化の原因「糖化」を防止しよう

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