夏に採卵したほうが出産率は高い?オーストラリア・パース市の調査

妊活コラム

ヒトは一年中いつでも妊娠できる動物です。
当たり前のように感じますが、ほとんどのほ乳類は発情期以外には妊娠しません。
しかし、ヒトも季節により妊娠しやすさ、しにくさは若干の差があるようです。

ここではオーストラリア西部の都市、パース市の不妊治療病院での興味深い調査と、記事を読んだ上で考慮しなければならない「パース市とあなたが住む土地の天候の差」について紹介します。

夏に採卵した受精卵は冬の採卵より30%出生率が高いという調査報告

パース市は西オーストラリア州最大の都市で、地中海気候に恵まれた住み心地の良い街とされています。
このパース市にある不妊治療病院では、受精卵を採卵した季節により、どれだけ出生率に差があるか調査を行いました。
出典:Season at the time of oocyte collection and frozen embryo transfer outcomes. S J Leathersich, C S Roche, M Walls, E Nathan, R J Hart

期間・2013年1月から2021年12月
調査対象・オーストラリア・パース市の病院1ヶ所の3,659件の凍結胚
(1,835人の患者さんが行ったIVF2,155件)
平均の採卵年齢は34.5歳、凍結胚移植36.1歳、胚の凍結保存期間の中央値は0.4年

以上の結果、夏に採卵した凍結胚のほうが、秋に採卵した凍結胚よりも30%も出生率が高いという結果が出ました。(ちなみに胚移植はどの季節でも結果は変わりませんでした)
パース市に限らず、出生率には季節が関係するという話は世界中で散見されますが、今回の調査ではそれがより明らかになりました。

夏のほうが秋より出生率が高い受精卵が採卵できるのは、日照時間とビタミンD生成が関係していると考えられます。



ビタミンDは妊娠、出産に欠かせないビタミン

ビタミンDは骨を頑丈にして、免疫を上げる効果があるビタミンの一種です。
脂溶性ビタミンで日光に当たると生成されるため、ビタミンCのように毎日摂取しなくても良いとされています。あまり日焼けは良いものではありませんが、過剰な日焼け対策をすると、ビタミンDの生成が難しくなります。
ぜひ、毎日日光に当たる習慣を付けましょう。

ビタミンDが不足すると妊娠しにくい、流産しやすいという特徴があることが分かりました。出生率はビタミンD欠乏症の方が23.2%なのに対し、ビタミンDが十分にある方は37.7%もありました。

出典:Vitamin D and assisted reproductive treatment outcome: a prospective cohort study.

ビタミンDの血中濃度と妊娠率には相関関係があり、ビタミンDが極端に不足すると排卵障害や性ホルモン不足など、さまざまな不妊トラブルが起こると考えられています。
日照時間が長いと体内でビタミンDが生成される時間が増えます。そのため、日照時間が長い夏は妊娠しやすく、短い冬は妊娠しにくいと考えられます。

この情報はパース市の気候を考慮する必要があります

「冬より夏に採卵するほうが成功率は高まる」のはビタミンD生成を考慮すると、理論上はその通りでしょう。
しかし、だからといって秋から治療を始めて来年の夏まで採卵を待つ、というのは大きな卵子老化リスクになりかねません。1周期でも早く、が採卵の基本なので、それを崩すほど気候が影響するかは疑問です。
もし日照時間によるビタミンD不足が原因なら、ビタミンDサプリを適時使い、ビタミンD欠乏症を防ぐと改善できる可能性があります。
ビタミンDは過剰摂取するとカルシウム血症という病気になることがあります。自己判断で勝手に飲まずに、必ず病院に相談して摂取しましょう。(可能なら、ビタミンD血中濃度を調べることをおすすめします。)

まだ病院に通院していない方は、ビタミンDサプリメントの1日推奨摂取量を守って飲みましょう。
ビタミンDは脂溶性ビタミンのため、過剰摂取するとなかなか体外に出ていきません。ビタミンD不足を気にしすぎて過剰摂取するのは絶対に止めましょう。

さらに考慮すべきは、パース市の気候です。
パース市は冬に雨期に入り、特に真冬の6月には一か月のうち15日は雨で、平均日照時間は177時間しかありません。春先の9~10月の日照時間も平均228~300時間弱ほどです。
夏の平均日照時間は359.6時間で、ほとんど雨が降らないため紫外線が強い可能性があります。

日本でも日本海側の豪雪地帯、沖縄県などは冬に曇りが多く、日照時間が極端に減ります。
逆に岡山県や太平洋側の地域、宮崎県などは冬に晴れの日が多く、ビタミンD生成にも有利な気候です。
「秋より夏に採卵すると出産率が30%上がった」というのはパース市に限った話であり、日本にそのまま当てはまるとは限りません。
特に、冬に晴れが多い地域では影響が限定的になる可能性があります。

一つの情報に触れたときには、自分にそれが当てはまるか、いったん落ち着いて考え直す習慣を付けましょう。
特に、今回の調査のような一地域の調査は、他の地域でもそのまま当てはまるとは限りません。
・他の地域の調査はあるか
・広範囲の調査があるか
・日本で調査したデータがあるか
など、多角的に調べる習慣を付けると、情報に振り回されにくくなります。



参考サイト

Care net 凍結胚移植の成績は採卵を行う季節の影響を受ける?
桜十字ウイメンズクリニック渋谷 妊娠に重要な栄養素 ビタミンDとカルシウム
Wikipedia パース(西オーストラリア州)

関連記事

特集記事

人気記事ランキング

  1. 1

    妊活中に避けたいNG行動は?無理ない範囲で改善しましょう。

  2. 2

    精子はできるだけ溜めておいた方がいいの?

  3. 3

    妊活、どのタイミングで病院にいくべきか

  4. 4

    若ければ不妊にはならないって本当?

  5. 5

    過剰なダイエットも太りすぎもNG!妊娠しやすい女性の体型と食生活

  6. 6

    妊活中から新型出生前検査のことを知っておきましょう!

  7. 7

    精子は熱に弱いって本当なのですか?妊活中にサウナはOK?

  8. 8

    不妊治療の初診はどんなことをするの?

  9. 9

    妊娠活動中の基礎体温の正しい測り方

  10. 10

    男性も無理のない範囲で始めよう!男性不妊の原因と改善法

最近の記事

  1. 魚を食べると、子供の神経発達遅延を減らす効果が判明しました。

  2. 「卵子凍結」は万能ではない?!凍結卵子は質が下がりやすい難点があります。

  3. 毎日ナッツを食べると男性の生殖能力が上がる?注意が必要です

  4. 今すぐ麻疹抗体の確認を!妊活、妊娠中に麻疹が起こす悪影響は?

  5. 漢方薬が急に不味くなった?無理に飲んでは良くない理由


TOP