先進国の中で日本はダントツに肥満率が低い国です。近年は肥満率が上がっていますが、それでも他国に比べれば低い状態を維持しています。
給食、食育などバランスの取れた教育が行き届き、適度な運動を行う人が多い証拠で、大変良いことです。
しかし、相対的に「痩せすぎ」の人が多いことが知られています。若い女性の20%前後が低体重、BMI18.5未満と言われています。
肥満のリスクは広く知られていますが、痩せすぎのリスクは摂食障害など、深刻な事例以外はあまり話題に上がりません。
低体重は美容体重と呼ばれてもてはやされていますが、健康と妊娠、何より赤ちゃんにとっては百害あって一利なし。
「低体重の問題」を知り、適正体重を目指しましょう。
低体重は月経周期の不安定、排卵障害を引き起こします
低体重は女性の身体を蝕み、妊娠に耐えられないほどボロボロになります。
今を生きていく上では問題ないように見えますが、今後の健康を維持できなくなります。
やせ型の女性は骨粗しょう症になりやすい傾向があり、将来は車いすや寝たきりになるリスクが上がります。
妊活では、痩せすぎるとこれらのリスクが急上昇します。
・稀発月経、または無月経
「無理なダイエットをして月経が止まった」
というのは珍しくありません。思春期の無月経の約6割は、急激な体重減少や強いストレスが原因と言われています。食事はしっかり食べても激しい運動を続けていると、月経が止まることが知られています。
医学的には3ヵ月以上月経がない状態を「無月経」と呼び、早急に婦人科で治療を受けることを強く推奨しています。たとえ無月経でも、ダイエットを止めれば90%の女性は6カ月以内に月経が回復します。
月経周期は25日~38日が正常値です。39日以上の月経周期の場合は「稀発月経」と呼び、排卵障害が起こりやすい可能性があります。
飢餓状態が続くと、人体は生きることを最優先して、それ以外の機能を一時停止します。月経が止まる、数か月に一度しか来ないなど、さまざまなトラブルが起こるのは「生命の危機」と言っても過言でありません。
・排卵障害
きちんと定期的に月経が来ているのに、排卵していないこともあります。特に月経周期が短すぎる(24日以下)頻発月経になると、排卵していない可能性があります。
健康な女性でも一年に一度ほどは排卵しないことは珍しくありません。しかし排卵障害が続くと治療を行っても回復しないことがあります。
不妊治療で最も難しいことの一つは排卵障害の治療と言われています。体外受精を選んでも、まずは卵子と精子がなければ治療を始められません。
排卵障害が恐ろしいのは、定期的に月経がある女性でも排卵が必ず起こっているとは限らないところです。排卵検査薬を使わなければ、素人が判断することはできません。
月経が回復しても排卵障害が続くこともあるので、過去に無理なダイエットをした方は一度婦人科で検査を行うことをおすすめします。
赤ちゃんの低体重を招き、将来の病気リスクを上げます
低体重の女性であっても排卵していれば、妊娠、出産はできます。しかし、子供にさまざまなリスクを背負わせるかもしれません。
低体重の女性の子は低体重に生まれやすい傾向があります。(出生体重2,500g未満)
低体重に生まれた子は成人後に心筋梗塞や脳卒中、糖尿病、高血圧リスクが上がることが判明しました。
心筋梗塞や脳卒中リスクは、出生体重2,500g未満で1.25倍、1,500g未満で1.76倍にもなります。
出典:国立成育医療研究センター 低出生体重による出生は心血管疾患や生活習慣病リスクを増加 ~
https://www.ncchd.go.jp/press/2023/1121.html
低体重になればなるほどリスクが上がり、「家族もご先祖も健康なのに、なぜか子供だけ糖尿病になった」という事例が起こりやすくなります。
生まれた子供の将来を考えると、低体重はできる限り改善すべきだと思います。
「非日常」から卒業して、健康美人を目指す
美容体形がもてはやされるのは、飽食社会でありながら極端に痩せているのは希少価値があるからです。
埴輪や平安絵巻などを見れば分かりますが、食料が不足した時代には、ふっくらとした体形の女性がもてはやされていました。
現在はだれでも食事の贅沢がしやすい時代になり、肥満体形は珍しいものでなくなりました。すると価値が逆転して、過剰に痩せた女性が美しいという価値観になりました。
美容体形に憧れ、辛いダイエットを続ける努力は並大抵なことではありません。
夢に殉じて妊活を諦めるのも潔い生き様ですが、これから妊娠を目指すなら夢から現実に戻る努力が必要です。
今まで美容体形を維持するほど強い意志を持ち続けられたなら、現実でも上手くいきます。美容体形に別れを告げても、その努力は決して無駄にはなりません。
痩せすぎの女性は今日から、一口多めに食べることを心がけましょう。たんぱく質、炭水化物、食物繊維を含む野菜、豆類を少しずつ増やすことを意識しましょう。
併せて鉄分やカルシウムが多い食品も、積極的に食べることをおすすめします。
参考サイト
CareNet シンデレラ体重の若年日本人女性の栄養不良の実態が明らかに
東京都保健医療局 「やせ」は健康リスクを高めます。
一般社団法人 日本思春期学会 「ダイエットをしてから、月経が止まりました」
ユイ・レディースクリニック横浜 月経異常、月経不順とは
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