基礎体温表ではおおよその排卵期や高温期のトラブル、無排卵などさまざまなことが分かります。
基礎体温を測り、グラフにするのは昔から妊活に使われてきた基礎で、今でも大変有効な手段です。
しかし基礎体温表だけでは分からない不妊原因はいくつもあります。
きちんとタイミングを取っているのになかなか妊娠しない場合は、ぜひ検査を受けましょう。ちょっとした処置ですぐ妊娠できるケースもあります。
卵管閉塞など、卵管のトラブル
きちんと排卵しても、卵管が塞がっている(卵管閉塞)、または狭くなっている(卵管狭窄)場合は、卵子が通れません。
卵管閉塞は、完全に卵管が塞がっている状態です。精子も卵子も通れず、妊娠に至りません。
卵管は2本ありますが、2本とも閉塞している場合は手術などで卵管の詰まりを取り除くか、体外受精をしなければ妊娠は叶いません。
卵管狭窄は、精子は通れるけれど受精卵は通れません。
そのため、卵管の中で着床してしまう「異所性妊娠」の原因になることがあります。緊急手術が必要になることがあり、非常に危険な状態です。
基礎体温表が正常なので、適切な処置さえすれば妊娠できる可能性が高いといえます。
卵管閉塞や卵管狭窄は、「子宮卵管造影検査」や「通水(または通気)検査」で確定します。
子宮卵管造影検査は、子宮と卵管に造影剤を注入して、レントゲン写真を撮影します。通水(通気)検査は卵管に生理食塩水や空気を注入して、卵管の通りを確認するものです。
注入された造影剤や水は、ただちに体内に取り込まれて排出されるので問題ないとされています。
実は、この検査で軽度の閉塞や狭窄は取り除けます。「検査をしたら妊娠率が上がる」と評判が高く、妊活を成功させたいならぜひ受けておきたい検査です。
卵管閉塞が激しい方は激しい腹痛が起こるため、一部では評判は良くないそうですが、耐えられないほど痛い時は検査技師や看護師の方に言えば中断できます。
重度の閉塞の場合は、治療は手術か、体外受精を行います。
世界初の体外受精を行った母は、重度の卵管閉塞でした。
精子を攻撃してしまう「抗精子抗体」
免疫(抗体)が原因で妊娠が難しくなることがあります。抗体は女性ホルモンとは関係ないので、基礎体温表に現れることはありません。
精子は、女性にとっては異物です。
人体には異物を攻撃する「抗体」があり、細菌やウイルスなど外敵から身を守ります。
精子は攻撃されない仕組みがあり、攻撃されずに侵入を許します。
しかし中には精子を攻撃する抗体「抗精子抗体」ができることがあります。
抗精子抗体があると精子を異物とみなして攻撃するので、精子の運動が止まってしまいます。そのため自然妊娠が難しくなります。
抗精子抗体の検査は血液検査や、フーナー検査(性交後、子宮頚管粘液の中にいる精子の数や運動量を調べる検査)で調べることができます。
治療は抗体の数値で変わりますが、軽度なら人工授精を、重度なら体外受精や顕微授精など高度不妊治療を行います。
受精卵になると半分は自分の細胞なので、抗体が攻撃しなくなるためです。
子宮頸管粘液が出にくい・子宮筋腫など子宮トラブル
子宮のトラブルは女性ホルモンが原因で起こることがあります。
特に子宮筋腫は、正常に女性ホルモン(エストロゲン)が分泌されると、かえって症状が悪化します。
普段は子宮に精子が入ることはできません。子宮頚管という関門があり、ここで侵入を阻止されてしまうためです。
排卵直前になると、子宮頚管から粘液が出ます。この粘液、子宮頚管粘液が架け橋になり、精子が子宮に入ることができます。
この子宮頚管粘液が少ない、質が良くない場合は精子が子宮にたどり着くのが難しくなります。
これもフーナー検査で調べることができます。もし良くない結果でも人工授精をすれば解決するので、気にすることはありません。
子宮筋腫や子宮の形態異常など、子宮トラブルがある場合は着床障害を起こすことがあります。
せっかく排卵して受精卵になったものの、子宮に着床する時に筋腫やポリープの上では着床できないと考えられています。
子宮筋腫やポリープの場合は、出来る場所や大きさによって重症度が大きく変わります。大きな筋腫がいくつかあっても自然妊娠する方もいるので、「妊娠しない」よりも「妊娠しにくくなる」のほうがより正確な表現になるかもしれません。
検査は超音波健診で行いますが、超音波では筋腫が見えにくいため「子宮内視鏡検査」やMRIで確定診断を行います。
子宮筋腫は女性ホルモンのエストロゲンに反応して大きくなります。
すぐに妊娠を望まない場合は低用量ピルや疑似的に閉経状態にする薬を使い、小さくする治療を行います。
妊活を続けるなら手術で筋腫を取り除く手段もあります。どの方法を選ぶかは、ご家族や医師とよく相談した上で決めましょう。
子宮筋腫がある方は月経痛が重く、血の量が多い傾向があります。
貧血になりやすい、ナプキンが数時間で使えなくなるほど量が多いなど、心当たりがある方はすぐに婦人科で検査を受けましょう。
まとめ
以上が、基礎体温表には現れない不妊原因の代表格です。
基礎体温表は女性ホルモンの推移を診るのには適していますが、これらの問題があれば自然妊娠は難しくなります。
妊活を始めて半年以上授からない場合は、できるだけ早く婦人科で検査を受けましょう。トラブルを見つけても早ければ早いほど対策が打ちやすく、若ければ若いほど妊娠率も上がるためです。
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