世間では「コロナ明け」という雰囲気が漂っていますが、新型コロナウイルスの現状がどうなっているかご存じでしょうか?
現在流行している株はオミクロン株ですが、世界各地で感染対策を放棄した結果、数えきれないほどの変異株が生まれ、免疫逃避性(抗体があっても感染しやすくする作用)を上げています。
しかもマスクを付ける人が減り、換気や手洗いの習慣が疎かになった結果、ますます感染リスクが上がっています。
「いちど感染したから、もういいや」と感染対策を放棄したくなるかもしれません。
しかし、新型コロナウイルス感染症は妊活にも大きな悪影響を与えます。
生殖能力の低下のメカニズムと、日常生活を破壊する「コロナ後遺症」」について紹介します。
新型コロナウイルス感染は、精巣内の「精子の元」を自死させる
コロナ感染をすると高熱や激しい喉の痛み、咳が続き、とても辛い症状が続きます。
ワクチン接種が進み、入院や肺炎などで亡くなるケースは減りましたが、回復しても強い倦怠感やブレインフォグ(頭にモヤがかかったように思考が定まらない状態)、味覚、臭覚障害など、いわゆる「コロナ後遺症」が問題になっています。
コロナ後遺症は200種類あると言われ、意外な症状が出ることがあります。
コロナ感染後、男性の精子が減る、運動率が悪くなることが知られています。そのメカニズムが解明されつつあります。
精子はまだ胎児の時代に原型の細胞(精原細胞)が作られ、第二次性徴まで精巣で眠ります。精原細胞は男性ホルモンに晒されると一次精母細胞、二次精母細胞、精細胞という過程を経て、精子に成長(変態)します。
新型コロナウイルスは、一次精母細胞に感染してアポトーシス(自死)を促すことが判明しました。精子の元が減ることで、精子の数が減るのは当然の結果でしょう。
一次精母細胞から精子まで72~74日ほどかかります。精子が回復するには、最低でも3ヵ月の時間が必要です。
さらに良くないのは、コロナウイルスは細胞に持続感染するという報告があります。精母細胞に持続感染しているという報告は現在のところまだありませんが、もし持続感染すると精子減少がいつまでも改善しなくなるおそれがあります。
卵子の成長も精子と同じで、一次卵胞、二次卵胞を経て卵子に成長します。
卵子は精子と異なり、一次、二次と進むにつれ厳しい選別が加わり、最終的には1周期で1個に選別されます。
卵子まで成長できるのはごくわずかなため、もし一次卵胞をアポトーシスされても被害が見えにくい可能性があります。
妊活や不妊治療では、現在のところ男性に後遺症が出やすいことが分かっています。
時には人生を奪われる「コロナ後遺症」とは
定期的にワクチン接種をすれば、新型コロナに感染しても肺炎で重症化するリスクを下げることはできます。しかし、感染後に倦怠感などで日常生活が送れなくなる方が急増しています。
「Long COVID」、いわゆるコロナ後遺症と呼ばれる症状で、重症化すると寝たきりになり一歩も動けなくなることがあります。(厚生労働省は「罹患後症状」と名称)
コロナ後遺症は回復後に起こる、または感染時から起こる症状の総称で、病状は多岐にわたります。(いったん回復して、再び発症することもあります)
厚生労働省では「疲労感、倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下など」の症状が紹介されていますが、これ以外の症状もたくさんあります。
何故これだけの症状が出るのか、原因ははっきり分かっていません。しかし新型コロナウイルスは血管内などに炎症を起こすことがあり、全身に炎症を引き起こします。
コロナ後遺症は女性の方がリスクが高く、中には寝たきりになる方もいます。仕事どころか日常生活もままならず、わずかに体調が良くなっても、少しの刺激で再び症状が悪化することがあります。(クラッシュと呼ばれます)
コロナ後遺症は軽症でも発症します。罹ったときはただの風邪だったのに、回復後に重篤な後遺症を発症することがあります。
後遺症の発症率は、WHOの調査では約10~20%です。治療法はほとんどなく、時間の経過で改善を待つしかありません。
後遺症を発症、悪化させないためにも、コロナ罹患後、最低3ヵ月は無理をしない、定期的なワクチン接種を続けることを心がけましょう。残念ながら現在のワクチンでは後遺症をゼロにできませんが、確率を下げることはできます。
何より、感染しないことが最大の対策です。マスク着用を続け、手指消毒、三密(密集、密接、密集)をできるだけ避ける、換気などは効果的です。
世間はすっかりコロナ明けのような雰囲気ですが、雰囲気に飲まれず感染対策を続けましょう。妊活を続けるためには元気な体を維持することが、何より大切です。
参考サイト
日本貿易振興機構 米国で新型コロナ感染後遺症による就労困難者、フルタイム当量で約400万人とシンクタンク推計
SPRINGER LINK CD147はSARS-CoV-2感染のSタンパク質偽ウイルスと精原細胞アポトーシスの誘導を媒介する
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厚生労働省 新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A
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