「酒は百薬の長」と永らく信じられていました。
日本では成年であれば誰でもお酒を買い、飲むことができます。スーパーやコンビニには必ず酒コーナーがあり、飲食店では飲み放題メニューがあふれています。
近年でようやく飲酒運転や過剰飲酒、アルコールの強要が悪いという認識にはなりましたが、少し飲む程度なら良いと考える方がほとんどでしょう。
しかし、飲酒は少量でも悪影響があるという研究結果が出ています。
妊活にとっても良くない影響があると考えられるので、無理のない程度に酒量を減らすか、思い切って禁酒するほうが良いかもしれません。
少量の飲酒は長寿になりやすい統計があります。しかし…
飲酒量と寿命にはある程度の相関関係があります。
全く飲酒をしない人を基準にすると、少量の飲酒をする人のほうが死亡率は下がる、という統計があります。「Jカーブ効果」と呼ばれ、酒は百薬の長と呼ばれるエビデンス(科学的根拠)になっています。
日本の統計では、男女とも1日あたりの飲酒量0.1~45.9gまでは、全く飲酒しない人に比べて死亡数が下がることが統計上明らかになっています。
適度な飲酒は心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中など)のリスクを下げることはあるでしょう。アルコール摂取で血管が広がり、血流が良くなることで心血管リスクを下げると考えられます。
ただし、すべての疾患を退けるわけではありません。1滴でもアルコールを摂取すれだけでリスクが上がる疾患もあります。
血中に過剰な脂質が流れ、血管にへばり付く脂質異常症、高血圧、脳出血、乳がん(40歳以上)のリスクは、ごく少量の飲酒でもリスクが上がります。これらの疾患は飲酒量が多ければ多いほどリスクが上がるのが特徴です。
脂質異常症と排卵障害
脂質異常症の女性は医学的な肥満体重であることが多く、排卵障害などさまざまな不妊リスクが上がります。
特にPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)という、卵巣の中に卵子予備軍が多すぎて育ちにくい排卵障害を起こしやすくなります。
排卵障害は不妊治療の中でも最も厄介な症状のひとつ。まずは精子と卵子が揃わなければ妊娠するチャンスが掴めません。
PCOSも原因はいくつかあると考えられていますが、糖尿病薬やダイエットで症状が緩和することもあります。脂質異常症を悪化させる習慣は、できるだけ避けましょう。
何より脂質異常症が恐ろしいのは、妊娠した後から起こる合併症です。
妊娠高血圧症候群(妊娠中だけ高血圧になる疾患)など非常に危険な疾患を起こしやすくなり、母子ともに命の危機にさらされます。
早産、流産リスクの上昇や、出産後の赤ちゃんが病気になりやすく、死亡率が上がるという報告もあります。
脂質異常症は飲酒量が多ければ多いほどリスクが上がります。
脂質異常症リスクが少ない女性なら多少の飲酒は問題ありません。しかし、医学的な標準体重よりずっと重い方や、痩せていても脂質異常症の方は、今日から飲酒を控えましょう。
乳がんに限らず、がんを発症すると妊娠しても妊娠を諦めざるを得ない、辛い選択を強いられる可能性があります。
がんは一定確率で起こってしまうもので、完全に止めることはできません。しかし発生リスクを下げられるがん、ワクチン接種で発症を大きく抑えられるがん(子宮頸がん)はあります。
妊活をする以上、将来のお子さんの人生があなたにかかっています。無理のない範囲で、がんリスクを減らす生活習慣を送りましょう。
妊娠後は飲酒NG!今から量を減らす努力を
どれだけ酒好きの女性でも、妊娠が発覚した後は絶対に飲酒はできません。
アルコールは胎盤を通してしまうため、胎児に大きな悪影響を与えるからです。
妊娠中は、ごく少量飲酒しただけでも、赤ちゃんに「胎児性アルコール・スペクトラム障害」という障害が起こることがあります。
赤ちゃんの低体重や脳の発達障害、独特の顔つきになるなど、広範囲に影響を与えます。
予防だけが唯一の手段で、治療法がありません。
妊娠期間が初期でも後期でも、飲酒量がわずかでも発生リスクがあります。妊娠中の女性は完全に飲酒を控えなければなりません。
さらに、赤ちゃんが成長した後にADHDやうつ病、依存症などの精神疾患が現れることがあります。
「妊娠中の飲酒は、赤ちゃんへの呪い」です。妊娠中の飲酒は、人の人生を左右しかねない危険な行為です。
妊活中はいつ妊娠しても不思議ではありません。
できるだけ排卵後7日や移植後から完全にお酒を断ち、妊娠に備えましょう。
妊活中から妊娠中の飲酒は「百害あって一利なし」と断言できるでしょう。
参考サイト
厚生労働省e-ヘルスネット 胎児性アルコール・スペクトラム障害
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