妊活中の女性はぜひ、標準体重を目指しましょう。痩せすぎも、太りすぎも排卵障害を起こして妊娠しにくくなります。
コレステロールなど脂肪は嫌われがちですが、脂肪酸は細胞膜の材料になる大事な成分です。ヒトを含む動物は細胞膜がなければ身体を支えることができません。
何より、コレステロールはエストロゲンやプロゲステロンなど、卵子の成長や妊娠にかかわるホルモンの原料になります。エストロゲンが不足すると卵子が育ちにくくなり排卵障害リスクが上がります。
エストロゲン不足と排卵障害
不妊治療で最も治療が難しい疾患のひとつは排卵障害です。適正体重にすると回復することもありますし、排卵誘発剤で回復する方もいますが、それでも排卵しないと治療が難しくなります。
まずは卵子と精子が揃わないと妊娠は始まりません。
若い女性は過度なダイエットなどで痩せすぎることが少なくありません。美容の面では良いかもしれませんが、痩せすぎは妊娠する力はもちろん、将来の骨粗鬆症や脳出血リスクなどを上げる、危険な状態です。
身体が飢餓状態になると、エネルギーを生命維持に集中させます。排卵を止め、月経がなくなるのはこのためです。
美容目的でも身体を飢餓状態にするのは大きな問題です。
妊娠しやすい、適正な体重を知り、目指しましょう。出産後は赤ちゃんのお世話で莫大なエネルギーが必要です。過食の習慣を付けなければ
適正な体重を知るために「BMIとは」
BMI(ボディ・マス・インデックス)は体重と身長から計算される数値で、健康的な体重の目安になります。
計算方法は簡単です。一つだけ注意したいのは、身長はcmでなく「m」単位です。
BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)
例えば、体重が50kgで、身長が1.6m(160cm)の場合、BMIは次のように計算します。
50(kg) ÷ 1.6(m) ÷ 1.6(m)=BMI値19.5
このBMIの値をもとに、自分の体重がどの範囲にあるかを確認できます。
18.5未満:低体重
18.5~24.9:普通体重
25.0~29.9:過体重
30.0以上:肥満
身長160cmの方の普通体重は、48kg~64kgです。「そんなに太っていいの?」と思うかもしれませんが、むしろこれくらいが正常です。
普通体重を保つと健康的にも良く、何より妊活にも理想とされています。この範囲なら十分な女性ホルモンが分泌される確率が上がり、月経の回復や排卵障害リスクを下げることができます。
(高プロラクチン血症など、女性ホルモン不足以外の原因の場合は、体重管理だけでは改善しません。併せて症状に合わせた治療を行います。)
妊娠中も普通体重なら健康リスクを抑えることができます。妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクを下げ、母子とも健康的に過ごせます。
BMIが低すぎると(18.5未満)栄養不足の可能性があり、高すぎると(25以上)妊娠合併症のリスクが高まります。妊活中は妊娠がゴールと考えがちですが、妊娠はお子さんにとってはスタートです。
太るのが怖い?もしかすると「神経性やせ症」かも
妊娠に支障が出るほど痩せているのは問題で、妊活をするならまず普通体重を目指す…と頭では分かっているけれど、太るのが怖い、今までの努力を否定するのは嫌だと思うかもしれません。
ダイエットは出産後でもできます。それなのに合理的に考えられない時は「神経性やせ症」という病気かもしれません。
神経性やせ症は、食べたくても痩せたいから我慢する、を続けてしまう精神疾患です。ダイエットの一環だと本人は思っているので病気であると気付きにくいですが、妊活に支障が出るほど痩せているのは立派な病気です。拒食症とも呼ばれます。
医学的に肥満なら適切なダイエットは必要ですが、医学的に痩せすぎなのにダイエットを続けるのは異常事態です。
健康であることと美が一致しないことは珍しくありませんが、妊娠を目指すならいったんは美のこだわりは捨て、普通体重まで体重を増やすことが必要です。
それが心理的抵抗でできない場合は、治療が必要です。すでに不妊治療を始めているなら、まずはそのクリニックの医師に相談して下さい。(神経性やせ症の患者さんは珍しくないので、医師もすぐ対応できます)
治療は内科か心療内科などで行います。
神経性やせ症は死亡率が7%もあり、自然に治ることはほとんどないとされています。
神経性やせ症はこだわりが強い人、完璧主義な人、自己評価が低い人がなりやすく、家族間のトラブルなどで悪化することがあります。本人の性格とは関係なく、視床下部と下垂体系の神経内分泌学的異常など、物理的な原因のことがあります。
妊活をきっかけに治療を始める、というのは強い治療動機になるでしょう。
まだ生まれていませんが、未来のお子さんに命を助けられたと思い、治療を始めて頂ければと思います。
コメント