近年話題に上がることが増えた卵子凍結は、女性の加齢を克服できる(可能性がある)不妊治療として認知度が上がっています。
東京都で「卵子凍結の助成が開始」が始まり、行政でも支援が始まりつつあります。
若いうちに卵子を保管すれば、いざ高齢になっても妊娠出産に臨める…と思う方もいるでしょう。しかし、卵子凍結には多くのデメリットがあり、手放しで喜べるものではありません。
今回は卵子凍結のデメリットをご紹介します。
医療はメリットとデメリットを比較して治療方針を定めるものです、これらのデメリット以上にメリットがあると判断すれば、ぜひご検討下さい。
凍結すると、卵子の質が低下する
卵子凍結は夢の技術ではなく、さまざまなデメリットがあります。
・卵子は凍結に弱く、凍結すると質が悪くなる(※受精卵は凍結に強い)
・費用が高い
・体外受精の採卵と同様のリスクがある(卵子が激しく腫れ、死亡リスクがあるOHSSなど)
・高齢出産(35歳以上の妊娠、出産)は、母体合併症などのリスクが高い
費用面は今後、行政の補助などのサポートが広がるかもしれませんし、最大の問題は技術面で、「卵子は凍結に弱い」という点です。
卵子は受精卵に比べて水分を多く含みます。水分が多い豆腐を冷凍、解凍するとスカスカのスポンジのように変わりますが、受精していない卵子も同様のリスクがあります。
若い卵子は妊娠しやすいのは事実ですが、凍結すると一定数破壊されてしまうことは、きちんと認識しておくべきです。
2013年のアメリカ生殖医学会の統計によると、1つの成熟した凍結卵子が妊娠継続できる確率は4.5%~12%とされています。出産に至る確率は、さらに下がると想定されます。
そのため、複数の卵子を採卵し、保管して妊娠率を高めます。
ちなみに精子は数が膨大にあるので(健康な男性で数千万個~)精子の凍結リスクはほぼありません。何割かは凍結、解凍で壊れてしまいますが、数の多さでカバーできます。
解凍しても自ら動かないので顕微授精する必要がありますが、必要な手間はそれだけです。
卵子と精子では性質が全く異なるため、女性のほうがより重い負担になります。
受精卵は凍結に強いため、できれば卵子単体ではなく受精卵の状態で保管するほうが妊娠率は上がります。
採卵費用と、継続的な金銭的負担
金銭面でも、保存している限り負担が続くことは知っておくべきでしょう。
病院により異なる可能性がありますが、多くの病院では1年ごとに凍結保存費用を請求されます。
金額も病院によって変わりますが、最低でも1万円以上は必要です。
毎年1万円以上の費用が発生すること、もし更新手続きをしなければ破棄されることは、きちんと認識しましょう。
採卵のための費用もかなり高額です。卵子凍結の場合、採卵が1回で終わらず複数回続ける可能性もあるためです。
採卵のために使う薬は高額で、採卵手術も多額の費用が発生します。高度不妊治療は保険の対象になりましたが、卵子凍結保存は2014年4月現在、実費になります。
採卵が1回だけでは、将来子供を授かるだけの卵子数が確保できないことがあるため、複数回行うことが多いようです。
(もちろん1回で採卵できた卵子だけ保存する方法もありますが、その場合は妊娠率が下がるおそれがあります)
採卵できた卵子もすべて保存するわけではなく、成熟した卵子の基準をクリアしたものだけを凍結保管します。
卵子凍結は頼りにするのでなく、あくまで「切り札のひとつ」と考える
卵子凍結をしても妊娠率、出産率は低く、複数凍結しても必ず妊娠、出産に至るとは限りません。
卵子凍結はまだ始まって間がない技術で、技術が発展途上であることは知っておくべきでしょう。将来、さらに卵子に優しい凍結法が確立するかもしれませんが、現状では決して楽観視できない方法です。
何より、妊娠は人智を超えたものです。
どれだけ成長率の良い受精卵を移植しても、100%妊娠するわけではありません。
受精卵ですら確実でないので、況してや受精前の卵子では凍結をすれば解決、というわけではないことは自覚すべきでしょう。
妊娠、出産は想像以上に大きな負担になることも知っておきましょう。
妊娠、出産期間は母体にもリスクがあり、高齢になるほどリスクが上がります。妊娠高血圧、妊娠糖尿病など、妊娠中には様々な健康リスクが発生します。
出産後の子育ても、相当な体力が必要です。
卵子凍結をしてもしなくても、妊活は早ければ早いほど良いことに変わりはありません。卵子凍結はあくまで「切り札のひとつ」と考え、できるだけ早い時期に妊娠、出産を目指しましょう。
不妊治療で妊娠の確率を上げることはできますが、必ず妊娠できるわけではないからです。高齢であればあるほど再チャレンジが難しくなります。
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