風疹は麻疹に似た症状を起こす感染症です。感染すると2~3週間の潜伏期間を経て耳の後ろや首のリンパが腫れあがり、全身に小さな赤い発疹ができる症状が起こります。
風疹は飛沫感染か接触感染で発症します。マスクや手洗い、手指消毒はとても効果的です。
風疹は麻疹に比べると症状は軽く、感染に気付かないこともあります(不顕性感染)。たとえ免疫がなくても感染を防ぐ手段はあります。しかし妊娠中に感染すると胎児に障害が出ることがあり、非常に危険です。
ぜひ妊活中に風疹の抗体検査と、陰性の場合はワクチン接種を済ませておきましょう。
不妊治療を行う病院では初期検査で風疹、麻疹の抗体検査を行います。自己流で妊活をされている方は自力で抗体を調べるか、不妊治療へのステップアップをご検討下さい。
胎児に悪影響を与える「先天性風疹症候群(CRS)」とは
健康な成人にとって、風疹の症状はそれほど脅威になりません。しかし周囲にウイルスをまき散らし、ハイリスク者に感染させてしまう危険があります。公衆衛生の観点では非常に危険な感染症に違いありません。
特に危険なのは妊娠初期の妊婦です。風疹に抗体がない女性が妊娠初期に風疹に感染すると、胎児に先天性心疾患や高度難聴、白内障などを高い確率で発症させます。
妊娠初期ほどリスクが高く、妊娠1カ月で50%以上も発症します。2カ月では35%、3カ月18%、4カ月8%と、周期が増えるごとにリスクは低下します。
これを防ぐにはただ一つ、風疹の免疫(抗体)を持つだけです。
風疹は一度感染すると強い抗体が身に付き、長期間身を守ります。しかし抗体がすぐなくなってしまう方もいるため、感染歴があれば安全とは限りません。
安全に抗体を身に着けるためには「風疹麻疹ワクチン(MR)」を接種が必須です。MRワクチンを1回接種すると95%、2回接種すると99%の方が免疫を獲得できます。
母子手帳が残っているなら、ワクチン接種歴の確認ができます。2回接種していれば、十分な抗体を持っている可能性は高いでしょう。実家で確認してみましょう。
風疹麻疹ワクチンは品切れ続出中!トラベルクリニックなどでMMRワクチン接種する方法も
風疹の感染歴がない、MRワクチンの接種歴がない、接種しても1回だけ、という場合は十分な抗体を持っていない可能性が高いでしょう。
まずは内科などで「風疹の抗体検査」を行いましょう。検査方法は血液検査で、1週間ほどで判明します。
不妊治療を行う婦人科では、不妊治療を始める前の検査で風疹、麻疹や性病の抗体検査を行います。「そろそろ治療にステップアップしようか」と迷っているなら、検査目的で婦人科を受診するのも良いでしょう。
問題は、風疹抗体が陰性だった時です。
MRワクチンは幼児に接種することが最優先で、国内に在庫がほとんどありません。
無理にMRワクチンを接種すると、必要だった子供の分を奪うことになりかねません。
そのため、海外からの輸入ワクチンを接種するのも一つの方法です。
トラベルクリニックという、海外渡航者向けのクリニックでは各国で必要とされるワクチンの接種、抗体検査を行っています。
海外では狂犬病が蔓延しているため、狂犬病ワクチンなどの接種が必要です。抗体があることを証明できなければ入国が許されない国もあります。そのような需要を満たすために、海外(主にEU圏)から取り寄せたMMRワクチン(風疹、麻疹、おたふく風邪に効果があるワクチン)があります。
トラベルクリニックという名ですが、料金さえ支払えば渡航目的でない方でも原則接種できます。(在庫状況によっては、お断りされる場合もあります)
国内で認可されたワクチン接種で重大な副作用が出た場合は救済制度がありますが、輸入ワクチンは適用外です。
ただし、輸入ワクチンの卸業者が独自に輸入ワクチン救済制度を作っていることがあり、この業者から仕入れた輸入ワクチンに関しては一定の補助があります。独自の救済制度に関しては、トラベルクリニックにご確認下さい。
いつ妊娠するか分からない妊活中だからこそ、早めの抗体確認とワクチン接種をご検討下さい。
風疹は、妊娠中にワクチン接種はできません
風疹麻疹ワクチンは、ウイルスを弱体化させた生ワクチンです。
生ワクチンはごく弱い感染をさせて免疫を獲得させるため、妊娠中に接種すると胎児に感染してしまいます。そのため妊活中に接種しなければ間に合いません。
ワクチンの在庫があれば接種するのが一番ですが、現在はワクチンの在庫が著しく不足しています。
生ワクチンは製造に時間も手間もかかるため、すぐに増産することができません。そのため、まずは抗体検査を行い、十分な抗体がない場合はトラベルクリニックなどでワクチン接種、というのが最善の方法でしょう。
幸い、風疹ウイルスは不織布マスクの着用や手指消毒、手洗いなどで防ぐことができます。新型コロナウイルス感染症は現在も蔓延しているため、これらの感染対策は妊活中、妊娠中も続けていきましょう。
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