妊娠するけど育たない「不育症」とは?悲劇を少しでも減らすために、まずは検査を

妊活コラム

妊娠はするけれど流産を繰り返す…これほど辛いことはなかなかないでしょう。
不育症の医学的な定義は
「妊娠は成立するが流産、死産を繰り返す状態」
とされています。
妊娠陽性判定後に流産してしまった、理由もなくお腹の中で亡くなってしまったなど、さまざまなケースをすべて含みます。

一般的には、原因は何であれ、流産を2回繰り返すと不育症といいます。不育症の中には治療すれば出産できる原因もあるので、流産を繰り返すなら不育症の検査が出来る医療機関を受診して下さい。

流産は一定の確率で起こってしまう

流産は、胎児か母体どちらかに原因があります。
心拍確認後の流産率は、お母さんの年齢によりますが3~12%とされています。
どうしても受精の段階で、一定確率で生まれてくることができない遺伝子(胎児染色体異常)を持つことがあります。こればかりは残念ですが、現代医学では解決できません。
不育症の原因の41%は、胎児染色体異常です。

しかし、2回以上連続して流産が続く場合は、それだけではない原因が隠れていることがあります。
子宮の奇形、黄体ホルモン不足、免疫機能の異常、父母どちらか(または、どちらも)遺伝子異常など、さまざまな原因があります。原因不明の不育症もあり、全容はまだ解明されていません。

不育症の原因は多岐にわたります

不育症の原因で、現在のところはっきり分かっているのは以下の4つです。
・免疫機構の異常(抗リン脂質抗体症候群)
・内分泌系(ホルモン)の異常(甲状腺機能低下症、黄体ホルモン低下、糖尿病など)
・子宮の奇形
・親の遺伝子異常(染色体均衡型転座)
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抗リン脂質抗体症候群

抗リン脂質抗体症候群は不育症の代表的な原因のひとつです。抗リン脂質抗体という特殊な抗体ができる症状で、血管内で凝固し、血栓症を起こしやすくなります。
胎盤に血栓ができると胎児が育たず亡くなってしまう、育っても発育不良を引き起こします。血液検査を行うと、抗リン脂質抗体の有無が調べられます。
なぜ抗リン脂質抗体症候群になるか、原因は分かっていません。
脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高いため、妊活の有無にかかわらず、血栓を防ぐ治療を始める必要があります。

鎮痛剤で有名なアスピリンは、血液をサラサラにして血栓を防ぐ作用もあります。
抗リン脂質抗体症候群の治療(抗血小板療法)には欠かせない薬です。
さらに出産を目指すなら、妊娠陽性確定後からヘパリンという薬剤の自己注射を始めます。
出産間近まで1日2回、12時間おきに自己注射を行います。お腹など脂肪が厚い場所に接種します。
自己注射はかなり大変ですが、近年では糖尿病のインスリン注射のように負担が少ない注射針もあります。
注射の打ち方などは病院の指導があるので、何度か繰り返すとやがて慣れてきます。我が子のためと思って、ここは頑張りどころです。妊娠後期になると打つ場所が減ってきますが、医師や看護師と相談して負担が少ないやり方を模索しましょう。

アスピリンのみでは50%ほどの成功率ですが、ヘパリンと併用して70~80%まで成功率を上げることができます。

糖尿病や甲状腺機能低下症、黄体ホルモン不足など、ホルモンの異常も不育症の原因になります。
ホルモン剤で足りないホルモンを補う、糖尿病なら併せて食事管理や適度な運動を併用するなどすると、不育症は改善します。

これらの症状は治療が可能で、しかも治療効果が高い原因です。

子宮の奇形

子宮は胎児の時代に、ミュラー管という2本の管がくっついて形成されます。
この形成がうまく行かず、子宮の形が奇形になると流産や早産を起こしやすくなります。
女性の5%は何らかの子宮の奇形があると言われ、決して珍しい症状ではありません。
奇形があっても問題なく妊娠、出産する方も多いですが、何度も流産している方は治療(手術)の対象になります。
奇形の形により双角子宮、単角子宮、中隔子宮など名称があり、それぞれ流産リスクが異なります。
超音波検査や子宮卵管造影検査などで発見できます。

ただ、手術を行っても改善するとは限りません。
中隔子宮では出産率が改善する傾向が認められたものの、それ以外の奇形は効果が見られないという報告もあります。

親の遺伝子異常

遺伝子は生命の設計図で、ヒトには44本の常染色体と、2本の性染色体があります。
染色体をコピーする際、まれに情報の順番が入れ替わることがあります。「染色体均衡型転座」という現象で、遺伝情報は揃っているので普段は全く問題ありません。
しかし生殖の段階で、遺伝子情報の過不足で胎児が育たず、流産を繰り返すことがあります。

原因をはっきりさせたい時は、遺伝子検査を行うしかありません。
染色体検査を行う前に、必ず病院に併設されている遺伝カウンセリングを受けてください。
遺伝子の問題は命の尊厳にかかわるセンシティブな領域です。
日本では重大な遺伝子疾患の方に限り、体外受精で得られた受精卵の遺伝子を検査する着床前検査が許可されています。



参考サイト

日本医科大学付属病院 ヘパリン療法

日本生殖医学会 不育症とはどういうものですか?

難病情報センター 原発性抗リン脂質抗体症候群(指定難病48)

メディカルノート 子宮奇形とは? 女性の5%ほどにみられる病気

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