30代と40代の違いは非常に大きい…妊娠率に及ぼす年齢の影響

妊活コラム


女性は35歳を超えると妊娠率が下がります。
アンチエイジングや栄養面の向上で、女性の外観はいつまでも若々しく美しくなりました。しかし卵子は年齢相応に年を重ね、だんだんと元気を失います。

女性の場合は、30代と40代では大きく妊娠率が変わります。特に40歳を超えてからは、坂道を転がり落ちるように妊娠率が低下します。
これは、卵子の成り立ちが影響しています。これは女性の宿命であり、現時点では解決することはできません。

女性の卵子は胎児の時代に一生分を作る

男性の精子は常に新しく作られる、若い細胞です。男性が年を重ねても妊娠させる力を失いにくいのは、「新しく作られるから」です。

女性の卵子は、胎児の時代に一生ぶんの卵子のもと(原始卵胞)を作り、卵巣の中に温存します。
そのため、年齢+約1歳が卵子の年齢です。
30歳なら卵子の年齢は約31歳、40歳なら卵子の年齢は約41歳です。

しかも卵子は現時点ではアンチエイジングができません。年齢を重ねるたびに細胞のエネルギー源のミトコンドリアの機能が低下し、老化が進むと考えられています。
卵子の老化がなぜ起こるのか、医学的にはまだ原因がはっきり分かっていません。しかし年を重ねると老いるのは、感覚上でも分かりやすいでしょう。
31歳の卵子と41歳の卵子、どちらが妊娠しやすいかは言うまでもありません。

胎児の時代に約500~700万個あった卵子のもとは、生まれるころには200万個まで減ります。
ただ生きているだけでも卵子のもとは減り続け、初潮を迎える10代で約30万個まで減ります。1周期につき数百個の卵子のもとが成長をはじめ、そのうち1つだけが卵胞として成長します。



年齢が上がるたびに下がる妊娠率

「妊娠しにくいなら、不妊治療をすれば良い」
と考える方がいますが、それは誤りと言わざるを得ません。
不妊治療で高い効果が出る可能性があるのは、妊娠までのメカニズムに何らかのトラブルがあるカップルです。
たとえば、卵管が詰まって受精ができない場合は、卵管の詰まりを取り除く、または体外受精を行うことで妊娠することができます。
原因が分からない、はっきりしないトラブルがあっても、体外受精をすれば妊娠成立しやすい事もあります。
不妊治療には子供を授かりたい人を助ける医療であることは間違いありませんが、卵子の老化を改善する治療法は現在のところありません。
女性の年齢が若いほど(=卵子の年齢が若いほど)妊娠率は上がり、加齢以外でトラブルがなくても、女性の年齢が高いと妊娠率、出産率は下がります。

女性の年齢と妊娠率、出産率はどの程度変わるのでしょうか。
日本産科婦人科学会が、体外受精・顕微授精の治療成績を公開しているので、簡単にご紹介します。

出典:日本産科婦人科学会 2020年体外受精・胚移植等の臨床実施成績 年別 治療周期

女性の年齢が30歳の場合は、体外受精/顕微授精の妊娠率は約46%です(総ET)。
35歳で約43%まで微減し、この年齢から徐々に妊娠率が低下します。
さらに38歳で約36%、40歳で約29%、43歳で約16%、45歳で約9%まで低下します。

36歳から流産率が上昇

妊活のゴールは赤ちゃんが無事に産まれることです。妊娠は大きな節目になりますが、妊娠すれば全員が無事に産まれるとは限りません。
とても悲しいことですが、すべての妊娠には流産の可能性があります。女性の年齢は関係なく、8%ほどの確率で流産してしまいます。
胎児の染色体異常などが主な原因と言われているため、防ぐことはできません。

しかし、35歳以上の女性は流産率が上昇します。細胞分裂の際にエラーが起こりやすいためと考えられています。
35歳で約11%、35歳で約15%、41歳で約20%の妊娠で流産が発生します。
45歳では約33%にも達し、無事に産まれる可能性が大きく下がります。

流産は人生を変えてしまうほど心身にダメージを与えます。
悲しい別れを少しでも減らすためにも、女性ができるだけ若いうちに妊娠、出産にチャレンジするのが望ましいと言えるでしょう。

40代からの妊活は運しだいと覚悟を

それでも30代なら、体外受精を何度かチャレンジすれば妊娠できる可能性はあります。しかし40代を超えると一気に妊娠率が下がり、流産率が上がります。
病院によっては41歳が最後のチャンス、と指導するところもありますが、それでも確実ではありません。
「女性が40歳を超えてからの妊活は、運しだい」
と覚悟を決めることが必要です。たとえ妊娠できても、悲しい別れになる可能性があるからです。
逆に、覚悟が出来ていれば「いつ妊活を終えるか」「予算はこれだけ」と、人生設計が出来るようになるでしょう。
現在は不妊治療が保険適用されましたが(条件により制限があります)、それでもかなりの金額になります。保険適用は女性が43歳までになりますが、妊娠率、流産率を知ると妥当なラインだと言えるでしょう。

妊活は「妊娠のチャンスを増やす、(加齢以外の)妊娠トラブルを改善する」ことはできます。しかし確実に妊娠、出産できるとは限りません。
妊活の結果がどうなっても「ままならない」ことがあることを知ることは、大きな学びになります。



参考サイト

日本生殖医学会 加齢に伴う卵子の質の低下はどのような影響があるのですか?

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