男性不妊の検査は怖くない!検査内容と対策法

妊活コラム

女性の不妊検査は多くの情報がありますが、男性の不妊検査は女性に比べて情報が少ないのが現状です。「精子を調べるんだろう」くらいの印象しかないかもしれません。
実際は問診や触診、血液検査など、さまざまな検査を行います。

男性の不妊検査は女性に比べて簡単で、異常がなければ1回で済みます。(精液検査は健康な男性でも検査結果が不安定なので、2回以上行います)
女性のように「決められた日(月経周期〇日)に検査が必要」ということは原則なく、いつでも検査が受けられるのも特徴です。

問診

問診は診療の基本です。健康な人も病気の人も、まずは問診から始まります。
問診では医師が病歴や妊活期間などを聞き取りします。
問診で分かることはたくさんあります。精液検査や血液検査と組み合わせて総合的に診断します。

・妊活について
性交渉の頻度とタイミング、パートナーの不妊治療の有無(パートナーが当院以外で治療をしている場合)
タイミングを取っている場合は自己流か、医師の指示で行う「タイミング法」かも問われます。

・病気・病歴
現在治療中の病気があるか、過去の病歴について尋ねます。

妊活に悪影響を与える病気・病歴はいくつもあります。
糖尿病は悪化したまま放置すると末梢神経障害を引き起こし、ED、射精障害などさまざまな問題を引き起こします。射精した精子が膀胱に入ってしまう逆行性射精を起こすこともあります。
「成人になってから」おたふく風邪に感染した病歴があると、高熱で精巣炎を起こし、精子が死んでしまう可能性があります。(第二次性徴前なら問題ありません)
クラミジア、淋病など性感染症の病歴があると、精管閉塞、精巣炎を起こすことがあります。

新型コロナウイルス感染症の後遺症で、精子の運動率低下が見られることもあります。一時的な影響で済むか、長期的に症状が長引くかは、まだはっきり分かっていません。

その他、手術歴やAGA治療歴など、意外な病歴も尋ねられます。うっかり伝え忘れがないように、病歴をメモ書きして先生に渡すのが確実です。

・生活習慣
生活習慣も精子に大きな影響を与えます。
喫煙・飲酒の有無や頻度、ストレスや睡眠時間、食生活や運動習慣などの問診があります。
変わったところではサウナやサイクリングなどの趣味があるか問われることがあります。長時間の高温浴やサウナは精巣の温度を上昇させ、造精に悪影響を与えるおそれがあるからです。
サイクリングでサドルに長時間跨ることも、精巣に過度な刺激を与えて精子の生産を妨げることがあります。



視診・触診

問診と同時に視診、触診を行います。
外見を診るだけでも男性不妊の原因をある程度把握することができます。
顎髭や腋毛など体毛が異様に薄い、女性化乳房の場合は、男性ホルモンが少なすぎる可能性があります。

併せて、精索静脈瘤の視診を行います。
立っている時に陰嚢の左側だけ膨らんでいる、下腹部に力を入れると陰嚢の左側が膨らむ場合は精索静脈瘤の可能性があります。疑いがあれば超音波検査で精密検査を行います。
精索静脈瘤は静脈にコブができて血流が悪化し、精巣の機能が低下する症状です。男性不妊の40%は精索静脈瘤の疑いがあると言われ、早期発見と治療が必要です。

触診では精巣サイズの測定と行います。精巣が規定値より小さいと精液を造る能力が足りないおそれがあるためです。

血液検査

血液検査ではホルモン量、性病抗体の有無を測ります。
男性ホルモンのテストステロンが少ないと造成能力が低下することがあり、ホルモン剤による治療が必要です。テストステロンの合成を促すLH、精子の形成を促進させるFSHも同時に測ります。
女性ホルモンのエストラジオール(E2)も男性には必要なホルモンです。しかし量が多すぎると精子の形成を阻害することが知られています。

性病はクラミジア、淋病、HIV、梅毒などの抗体を調べます。これらの感染症は精巣の炎症、精管閉塞などを引き起こします。
過去に感染して現在は治っている場合も、精管閉塞が治らないこともあります。
現在進行形で感染中だとパートナーにも感染させ、男女とも不妊体質になりかねません。早急な治療が必要です。

精液検査

精液検査は、男性不妊の原因を調べる上で最も重要な検査です。精液の状態や量、精子の運動率や奇形率などを調べることで、今後の治療計画を立てます。
数日ほど禁欲期間を設け、クリニックの個室(または自宅)で精液を採取し、検査を行います。

精子のコンディションは日々変化し、同じ結果になるとは限りません。たとえ1回目の検査が正常でも2回目に良くない結果になることはよくあります。
そのため、多くの病院では日を空けて2回以上検査することがほとんどです。

たとえ無精子症だと診断されても、精巣の中に精子の元の細胞があれば顕微授精で不妊治療を行うことができます。
絶望的な結果に見えても、多くの場合は治療法があります。不妊は病気であり恥ではありません。思い切って検査を受けてみることをおすすめします。



参考サイト

帝京大学医学部泌尿器科アンドロロジー診療 糖尿病による性機能障害の原因と治療

PHOENIX ART CLINIC 男性不妊外来を受診したらどんなことをされるの?

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