「喫煙は身体に悪い」ということは、今では否定する人はほぼいないでしょう。
禁煙は妊活の第一歩です。禁煙外来などを活用して、ぜひカップルで禁煙を始めましょう。
しかし、健康に良いと言われる行動が妊活の妨げになることは珍しくありません。
男性の場合、陰嚢を過度に温める行動は精子を痛めつけ、精子のコンディションが悪くなります。
男性が好むサウナや長風呂などを過剰に行うのは注意が必要です。今回は、健康に良いと言われているけれど男性が気を付けたい習慣を紹介します。
精子は熱に弱い!理由は「減数分裂」のトラブルが多発するから
女性の卵巣は体内にあるのに、男性の精嚢はなぜ身体から飛び出しているのでしょうか。
精巣の温度が上がると、精子の形成が阻害されるからです。
体温は37℃ほどですが、精巣は体温よりも低い温度(約34℃)で維持されています。
精子と卵子は結合すると1つの細胞になるので、精子、卵子は染色体を半分ずつ持ちます。精子、卵子の元になる細胞は染色体が半分になる分裂(減数分裂)という工程が欠かせません。
何らかの理由で精巣の温度が上昇すると、精子形成の「減数分裂」が高温により影響を受けやすくなります。体温(体内深部温度)が37〜38℃まで上がると、相同染色体の分配がうまくいかず、細胞死を引き起こしやすくなります。
精子と卵子の染色体は、パズルのピースを当てはめなければ一つの生命になりません。そのため減数分裂は厳密に染色体を分ける必要があります。
染色体を2つに切って修復する過程が必要ですが、精子は高い温度だとこの修復過程でミスが連発します。
ミスで生まれた細胞はそのまま消えていくので、精子に成長できません。
女性の卵子は選別に選別を重ね、ごく一部の細胞しか卵子に成長できません。
しかし男性の精子は数が勝負です。ある程度数を揃えないと、卵子にたどり着くこともままなりません。そのため、低い温度で正常な減数分裂ができる環境が必要になったと考えられます。
高温が精子に与える影響は非常に大きいのです。
サウナ、長風呂を頻繁に行うのはNG
陰嚢が過剰に温まり続ける習慣はすべて、男性の妊活の妨げになります。
近年は男性の間でサウナが人気で、自宅にサウナ部屋を造る方もいるほどです。しかしサウナ中毒になるほど頻繁に長時間行いたい時は、対策が必要です。
サウナがどの程度男性不妊に悪影響を与えるかはまだ判明していませんが、サウナの入りすぎで一時的に精液所見、運動率の悪化が起こることは知られています。
サウナを完全に断つのが理想かもしれませんが、精液所見が悪化する前に「陰嚢を断熱する、冷やす工夫」を行うことが最優先です。
・厚手のタオルを巻いて断熱する
・保冷剤を当てて冷やす
などの工夫で、陰嚢の温度上昇をある程度は避けることができます。
男性専用のサウナの熱から股間を守るタオルなど、ユニークなアイテムがあるので、ぜひ積極的に活用していきましょう。
サウナの利用期間を延ばす、短時間で終わらせるなど、サウナ環境に触れる頻度を下げるのも効果的です。
精液所見が明らかに悪い場合も、サウナ絶ちをして3ヵ月ほどで回復、6ヶ月でほぼ完全に回復したケースもあります。
長風呂も同じ理由で、男性は避けたほうが良いでしょう。
風呂の温度は40℃前後ある上に、サウナのように陰嚢を保護する方法がありません。精液所見に問題がある男性は、毎日長風呂をするような習慣は、なるべく控えましょう。
風呂は重力から解放され、全身を温めるのでリラックス効果は抜群です。風呂に入ることはとても良い習慣なので、なるべく短時間でサっと上がる習慣を付けましょう。
こたつ、ひざにノートパソコンを置いて作業にも注意
同じ理由で、長時間こたつに入ること、ひざに直接ノートパソコンを置いて作業するのも避けた方が無難です。
ノートパソコンはどうしても熱を帯びやすいので、ひざに直接置くと股間に熱が伝わりやすくなります。ひざにクッションや座布団など断熱できるものを置いて、その上にパソコンを置けば安全です。
いちばん良いのはひざにノートパソコンを置かないことです。座椅子用のテーブルを買い、テーブルにノートパソコンを置いて作業しましょう。
角度を調整できる作業用テーブルもあるので、ひざに乗せるよりも作業がはかどるでしょう。
こたつは足先やひざまで足を入れるだけで、股間の低体温を維持しやすくなります。それでも長時間入ると温まった血液が陰嚢まで熱を伝えるので、長時間入るのはおすすめしません。身体が温まった時点でこたつから出ましょう。
疲れていると、うっかりこたつでうたた寝しがちですが、男性はこの習慣を避けた方が無難です。
ついやりがちな習慣が、意外なトラブルを起こすことがあります。精液所見が良くない男性でこれらの習慣に心当たりがある方は、今日からでも行動を改めましょう。
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