都市部や大きな道路の近くに住む方は多くいるでしょう。特に都市部は一日中賑やかな場所が多く、騒音を感じやすい環境です。
その騒音が不妊の原因のひとつになる可能性があることが、大規模調査で判明しました。
あくまで「原因のひとつ」ではありますが、今後の生活環境を考える参考になるかもしれません。
デンマークの研究で騒音とPM2.5が妊活に悪影響を与える結果に
デンマークの大規模な調査で、騒音やPM2.5に長時間晒された男女に不妊症が見られることが分かりました。
対象期間:2000年~2017年
対象者:結婚または同棲している、子供2人未満の30~45歳の男女約90万人(男性52万6,056人・女性37万7,850人)
調査方法:参加者の居住地の騒音レベルとPM2.5濃度を測定し、国家患者登録システムを用いて不妊症の診断情報を収集
調査の結果、次のことが分かりました。
・空気が汚れている地域に住む男性 → 不妊リスクが24%多い(女性は関連性なし)
・道路騒音がうるさい地域に住む「35歳以上の女性」 → 不妊リスクが14%多い
男性はPM2.5などの空気の汚れに、35歳以上の女性は道路交通騒音に特に影響を受けやすいということが分かりました。
道路交通騒音は、10.2 dB上がるごとに35~45歳女性の不妊リスクが14%上昇するという結果になりました。男性も騒音で37~45歳の方は不妊リスクが上がります。
なぜ騒音や空気の汚れが不妊の原因になるの?
なぜ騒音や空気の汚れが不妊の原因になるか、はっきりとした理由は分かりません。
推測の領域ですが、男性の精子は常に作り続けているため、PM2.5の悪影響が出やすいのではないかと考えられています。
道路交通の騒音は朝から夜までずっと続き、眠っている間も騒音に晒されていると考えられます。すると騒音が原因で眠れない、眠りが浅くなりやすくなるでしょう。
騒音によるストレスで不眠になるとホルモンバランスが乱れ、不妊の原因になると考えられています。深夜にホルモンが分泌されやすいので、深夜までぐっすり眠れないとうまく卵子が育たない可能性はあります。
騒音がなくても、女性は35歳から妊娠しにくくなります
10.2 dB上がるごとに女性の不妊が促進するというのは、恐ろしいことのように見えます。
ただ、この調査で気を付けたいのは「道路交通騒音は~(中略)~、30~34.9歳における不妊とは関連していなかった。」という結果です。
騒音があってもなくても、女性は35歳を超えると妊娠しづらくなります。
卵子は胎児のころに一生分作るため、年齢は女性の年齢+1歳です。35歳になると卵子の年齢は36歳になり、細胞分裂でトラブルを起こしやすくなります。
騒音は、主な原因の「加齢」を後押しする、サブ的な原因と考えたほうが良いかもしれません。
騒音が少ない環境に引っ越せば良いのかは要検討
もし静かな環境に引っ越しができるならそれに越したことはありません。しかし静かな環境は利便性の良くない場所が多く、車がなければ生活に苦労する可能性もあります。
不便なエリアは地価が安く、売りたくてもなかなか売れないというリスクもあります。
これから引っ越す予定の方は、国道など大通りの車道や工業地帯のすぐ横は、できる限り避けた方が良いかもしれません。しかし近年の日本家屋は防音技術が進み、窓を閉めればほぼ音が聞こえない環境を作ることができます。
少しだけ場所を変えるというのも良い選択です。大通りから1区画外れた場所にいるだけでも、騒音は大きく減らすことができます。
「賑やかなほうが寂しくなくて気が休まる」と感じる方なら、たとえ道路交通騒音があってもぐっすり眠れるでしょう。
問題は騒音そのものよりも、「騒音がもとで眠りを妨げられること」だと考えられます。たとえ道路沿いで暮らしていてもストレスなく暮らしているなら、無理に引っ越さなくても良いと思います。
(ただ、無意識下でストレスが溜まっている可能性があるので、数日ほど旅行して静かな宿泊施設に泊まり、眠りを確認すると良いかもしれません)
社会問題として、より厳しい騒音対策、大気汚染対策などが求められますが、いま個人でできる第一の選択肢は「防音対策」でしょう。
もとから引っ越しがある予定があったら、なるべく静かな場所に移動するのは良いことだと思います。しかし今の場所が煩いからといって、無理に引っ越すのは考えなおした方が良いかもしれません。
たとえ道路沿いでも二重窓にするなど、防音の工夫をすれば音の問題は大きく減らせます。
騒音に限らず「できること」「できないこと」を区別して、「できない中でどうすれば軽減できるか」の対策をするほうが、心身とも安心して暮らせるでしょう。
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