人工授精と体外受精、どちらが良い?混同しがちですが、全く異なる治療です

妊活コラム

人工授精と体外受精は言葉の響きが似ているせいか、不妊治療に詳しくない方は混同しがちです。自分は体外受精のつもりで尋ねたのに、相手は人工授精と勘違いして誤ったアドバイスをしてしまう、誤解を与えてしまうなど、トラブルになることは珍しくありません。

しかしこの2つは全く異なる治療です。
人工授精は1799年にイギリスで初めて行われ、200年以上の歴史がある不妊治療です。日本でも治療の歴史は長く、費用も比較的安価で、身体への負担も少ないなど利点があります。一方で妊娠率は高くなく、1回あたりの妊娠率は8.3%とされています。

参照:日本産婦人科医会 10.人工授精(AIH:Artificial Insemination with Husband’s semen)
https://www.jaog.or.jp/lecture/10%e4%ba%ba%e5%b7%a5%e6%8e%88%e7%b2%be/

体外受精は1979年にイギリスで初めて成功し、日本では1983年に初めて成功した比較的新しい治療法です。体内から卵子を採取して、特殊な環境で精子と出会わせて受精し、体内に戻す方法です。
卵管の詰まりや精子を攻撃する抗体、男性不妊で受精障害があっても妊娠が望める治療法で、原因不明の不妊症でも妊娠できる可能性があります。一方で治療できる医療機関は限られ、費用も高額です。地方では都市部まで通院が必要になることもあり、大きな障壁になります。

ここでは人工授精と体外受精の違い、どちらの治療法がより適しているかを解説します。

■概要
人工授精と体外受精は名前が似ていますが、仕組みも適応も大きく異なる不妊治療です。人工授精は200年以上の歴史があり、精子を子宮内に届けて自然妊娠に近い形で妊娠を目指す方法で、費用負担や身体的負担が比較的少ない一方、1回あたりの妊娠率は8.3%と高くありません。軽度の男性不妊や性交障害などに有効ですが、卵管閉塞や排卵障害がある場合は適応外です。

体外受精は卵子を採取し、体外で受精・培養して子宮に戻す高度な治療で、卵管閉塞や抗精子抗体、重度の男性不妊、原因不明不妊にも対応できます。妊娠率は人工授精より高く、30歳で約52%、40歳で約29%とされていますが、費用が高額で身体的負担も大きく、通院環境が治療のハードルになることもあります。

一般的には人工授精を数回行って妊娠に至らない場合、体外受精へのステップアップが検討されます。



人工授精とは?自然妊娠に近い形で妊娠を目指す治療

人工授精は、パートナーの男性から得た精液を処理し、女性の子宮内に直接注入する治療法です。
原理は比較的シンプルで、治療としても行いやすいため、ヒトの治療法としては200年以上の歴史があります。卵巣刺激を行うことが多く、多胎妊娠になる可能性は自然妊娠に比べて上がりますが、人工授精の前に卵胞の数や成長を確認するため、比較的安全性に配慮しながら治療を進められます。
軽度の男性不妊でも人工授精を選ぶことがあります。軽度の乏精子症、精子無力症の場合は子宮頸管を通過しにくい場合がありますが、人工授精なら子宮頸管という難所をスキップして、直接子宮内に届けることができます。子宮頸管粘液のトラブルや性交障害でも人工授精は有効な治療法です。

精液を処理する時間は必要ですが、施術は子宮頸管に柔らかいチューブを入れて、直接子宮に届けるだけなので短時間で終わります。
以前は自由診療で1回数万円ほどの費用が発生しましたが、現在は保険適用され、1割~3割負担(2026年度現在)で治療が受けられます。

メリットが多いように見えますが、人工授精にもデメリットはあります。最大のデメリットは妊娠率の低さでしょう。1回の人工授精の妊娠率は8.3%で、自然妊娠とあまり差はありません。
女性の年齢によって妊娠率が左右されるので、規定回数の人工授精を行っても妊娠しない場合は、体外受精にステップアップを検討します。

排卵障害や卵管閉塞があれば、人工授精は適用できません。手術でも治療が難しい重度の卵管閉塞がある場合は、体外受精が検討されます。

体外受精とは?受精を体の外で行う新しい不妊治療

体外受精は卵子を採取し、身体の外で精子と出会わせて受精を促す治療法です。
卵子を育てて採卵するまでは数種類の方法がありますが、一般的には多量のホルモン剤を投与して複数の卵胞を育て、複数の卵子を採取します。

人工的に赤ちゃんを作る治療というイメージを持つ方もいますが、精子と卵子の出会いの場が身体の外である以外は、自然妊娠で卵管の中で行われる受精と、基本的な仕組みは大きく変わりません。
手足を骨折したら骨のずれを直し、ギプスをはめて固定して骨の再生を促すように、医療の助けを借りて妊娠を目指すのは、正当な医療行為です。

受精から胚を育てる段階までを体外で行うため、妊娠という過程は自然妊娠と同じです。しかし体内と同じ環境を整えることは非常に高度な技術が必要で、難易度が高く、コストがかかります。
体外受精が自由診療の時代は1回の治療で30万円以上、受精卵の凍結や管理にも多額の費用が発生しました。それだけ治療環境を整えるためのコストが高い治療法です。

体外受精は比較的妊娠率が高く、女性が30歳までの場合は52%、40歳の場合は29%ほどです。
出典:はらメディカルクリニック 体外受精の妊娠率は? 年齢別データと当院実績を解説【医師監修】

体外受精の妊娠率は? 年齢別データと当院実績を解説【医師監修】

人工授精では対処が難しい重度の卵管閉塞や抗精子抗体があっても、体外受精なら妊娠が望めます。
原因がはっきり分からない不妊にも有効なことがあります。原因は不明ながら、妊娠までの過程のどこかで、何らかの問題が起きているケースもあると考えられています。
体外受精は妊娠までの長い道のりをスキップして、採卵→受精→培養→子宮に移植の4段階で妊娠を目指します。
自然妊娠は成立するまでに、いくつもの段階を経る必要があります。精子は子宮頸管を通り抜け、子宮から卵管へ進み、卵子のもとまで到達しなければなりません。卵子は卵胞が十分に育ち、排卵した後に卵管采(らんかんさい)という卵管の先の器官に取り込まれ、受精後は卵管を通って子宮へ移動し、子宮内膜に着床して妊娠が成立します。

重度の男性不妊の場合は胚培養士が精子を卵子に注入する「顕微授精」という方法で妊娠を目指します。

体外受精はメリットもありますが、デメリットもあります。
地方では対応できる医療機関が限られるため、都市部まで通院が必要になるケースもあります。
妊娠率は人工授精に比べて高いですが、100%には遠く及びません。複数の卵子を採取するためにホルモン剤を使用し、腟から針を挿入して採卵を行うなど、女性の体への負担が大きい治療法です。男性不妊の場合は精子を採取するための手術が必要で、男性にとって大きな負担になります。
保険治療の範囲内でも金額は相当に高く、自費のオプションを入れると1回の体外受精で数十万円以上の費用が発生することもあります。たとえ保険治療の範囲内でも、高額療養費制度は「月単位の上限額」になるため、採卵と移植の時期が月をまたぐと、2か月分の自己負担上限額が必要になるケースもあります。

名前こそ似ていますが、人工授精と体外受精は全く異なる治療です。
人工授精を数回行っても妊娠に至らない場合は、体外受精へのステップアップを検討するケースが一般的です。



参考サイト

日本産婦人科医会 10.人工授精(AIH:Artificial Insemination with Husband’s semen)

日本産婦人科医会 11.生殖補助医療(ART)

医療機関マーケティングディレクター H.R

医療機関マーケティングディレクター H.R

本業では医療機関のマーケティングディレクターとして、複数の医療機関のWebサイト制作および広告運用、Web戦略設計・改善を担当しています。 『みんなの妊活』では、本業で培った医療機関Webマーケティングの知見をもとに、妊活に関する正確で分かりやすい情報をお届けできるよう努めています。 マーケティングディレクター歴:12年 担当医療機関数:5施設 得意領域:Web戦略設計、サイト改善(UI/UX)、SEO対策、アクセス解析、広告運用、コーディング

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本業では医療機関のマーケティングディレクターとして、複数の医療機関のWebサイト制作および広告運用、Web戦略設計・改善を担当しています。 『みんなの妊活』では、本業で培った医療機関Webマーケティングの知見をもとに、妊活に関する正確で分かりやすい情報をお届けできるよう努めています。

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