感染法上の分類が5類になった新型コロナウイルスですが、感染するとさまざまな深刻な後遺症を起こすことが知られています。
仕事や通勤通学ができないほどの強い倦怠感、味覚障害、嗅覚障害などは有名ですが、妊活に支障が出る深刻なトラブルもあります。
現在判明している妊活に関係がある後遺症は、「ED(勃起障害)」「精子のコンディションの低下」などが挙げられます。
EDはまだ自覚ができますが、精子のコンディションは分かりません。ぜひ、感染後、症状が治まってからしばらく間を置いて(最低限、症状が治まって10日以上~3ヵ月経ってから)精液検査をすることをおすすめします。
コロナ感染後に精子数が大きく減る報告
スペインで2020年~2022年10月にコロナ感染をして「軽症だった」男性45人の精子を調べた調査があります。(検査はすべて感染後100日以内)
全員が感染前の精液検査のデータがあり、感染前と感染後の数値を比べることができました。
人数が少ないので参考程度ですが、その結果は驚くべきものです。
・精子濃度 1mLあたり6,800万→5,000万(26.5%減)
・精子数 1mLあたり1億6,000万→1億(37.5%減)
・動く精子数 80%→76%(5%減)
・運動率 49%→45%(9.1%減)
感染後も自然妊娠が期待できる数値ではありますが、かなりのインパクトのある結果です。
いちばんダメージを受けたのは総精子数で、平均57%も減少しました。
この調査では残念なことに、100日後以上経った方でも精子濃度、運動率は感染前には戻りませんでした。
しかしベルギーの調査では乏精子症(精子の数が少ない)が感染後1ヵ月未満で37%だったのが、2か月後には6%まで改善しています。時間が経てば、ある程度は改善する可能性はある、と考えても良さそうです。ただし全員が改善するとは限りません。
コロナ感染が原因となる精子トラブルは、再感染を防ぎながら、徐々に改善するのを待つのが現状できる唯一の方法です。
コロナ禍を精子検査のきっかけに
男性にとってはショックな内容だと思います。
今回の結果は「ダメージを受けても、自然妊娠には支障がない範囲」ではありますが、もし精子量や運動率にトラブルがある男性がコロナ感染をすると、ますます数値が悪化する可能性があります。
男性はなかなか精液検査に協力してくれない傾向がありますが、新型コロナウイルスはだれでも感染するリスクがあります。
もし感染していなければ、健康な状態のデータを取るためにも精液検査を薦めることをおすすめします。このような時代だからこそ説得力が増すでしょう。
もし感染したら、感染後100日前後を目安に精液検査をすることをおすすめします。
精子の細胞が生まれ変わるのには3ヵ月ほどかかるので、その時期に検査をすれば妊活に支障があるか、ないかの判定ができます。
もし精子の数が極端に少なくても、顕微授精を行えば妊娠は可能です。検査するのが怖い気持ちは分かりますが、精子の数がゼロでなければ、不妊治療を続けることはできます。
病気でも健康な人と同じように妊娠、出産ができる手伝いをするのが、不妊治療です。
病気や老化がもとで子供に恵まれないのを医療で解決するのは、足が折れた人に治療をほどこし、治るまで治療を続けることと同じです。
「病気なら医療の力を借りるのは当然」だと思い、気負わず検査に当たると良いかもしれません。
精液検査は
「今後、どのような治療が適切か。タイミングを続けるか、人工授精か、体外受精か」
という目安になる、大事な指標です。
今まで一度も検査を受けたことがなければ、コロナ禍は大きな後押しになるでしょう。
コロナウイルスは何度でも感染する
あまりにも症状や後遺症が激しい新型コロナウイルスですが、何より厄介なのは、何度でも感染することです。
コロナウイルスは免疫をすり抜ける能力があるので、たとえ感染しても数か月で抗体は失われ、再感染します。そして、再感染することでダメージが蓄積され、やがて大きな後遺症を患うリスクが上がります。
ただの風邪のように何度も感染するのに、感染のたびに人生を狂わせる後遺症を引き起こすリスクがある、厄介極まる感染症です。
新型コロナウイルスが5類に変更になったのは、世界規模で「封じ込めを諦めた」からに過ぎません。相変わらず新型コロナウイルスの厄介さはそのままで、後遺症が大きな問題になりつつあります。
新型コロナウイルス感染症の後遺症はまだ分からないことが多く、全容解明には時間がかかると思われます。
本当に「ただの風邪」程度の症状しか出ないケースはありますが、軽い風邪程度でも後から後遺症に苦しむことは珍しくありません。
目に見えない後遺症が多いので、自分が後遺症で苦しむまで実感できないかもしれません。
しかし感染リスクをできるだけ下げることはできます。
ワクチンの定期接種で、後遺症リスクをある程度下げることが知られています。
しかし現在のワクチンでは後遺症リスクをゼロにはできません。
不織布マスク着用、換気、手指の消毒や手洗い、人込みは極力避ける、マスクを着けていない人とは2メートルほど離れて話す(ソーシャルディスタンス)など、できるだけ感染しない対策を行っていきましょう。
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