多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が多内分泌代謝性卵巣症候群(PMOS)に変更されます。その意味は?

妊活コラム

排卵障害を引き起こす原因のひとつ、PCOSに悩まされる女性は少なくないでしょう。PCOSは8人に1人が罹患していると言われ、決して珍しい病気ではありません。
しかし、PCOSはたんに排卵障害を起こすだけの疾患ではありません。月経異常や糖尿病リスクの上昇、肥満、多毛、抜け毛、不安や抑うつなどの症状まで、精神面や美容面にもさまざまな影響を及ぼします。

そのため、国際的な協議を経て、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、「多内分泌代謝性卵巣症候群(PMOS)」という名称に替わりました。PCOSよりも病態を反映した名称に変えることで患者さんへの啓発を促す意図があります。PMOSでは不妊だけでなく、健康面や美容面のトラブルが起こることがあります。根治は難しくても、治療により症状を和らげ、QOLの改善を目指すことができます。

■概要
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は排卵障害だけでなく、月経異常、肥満、多毛、にきび、抜け毛、不安・抑うつなど幅広い症状を伴う疾患です。8人に1人が罹患するとされ、若い女性のQOLにも大きく影響します。こうした病態をより正確に示すため、国際的に「多内分泌代謝性卵巣症候群(PMOS)」へ名称変更されました。診断は月経異常、卵巣の多嚢胞所見、AMH高値、アンドロゲン過剰症などを総合的に評価します。治療は妊娠希望の有無で異なり、妊活中は排卵誘発剤やメトホルミンを使用し、妊娠を望まない場合は低用量ピルなどで月経周期を整えます。PMOSは長期的な病状管理が重要で、適切な治療により心身の負担を軽減できます。


PCOSからPMOSへ名称変更する理由

なぜ名称が変わるのでしょうか。旧来の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)という名称では、この疾患の一部しか表現できないためです。
PCOSは「卵巣の中に未熟な卵胞が多く見えること」に主眼を置いた名前です。しかし、PCOS(PMOS)に罹患する女性の苦労は妊娠しにくいだけではありません。
太りやすさや多毛、メンタル面の不調など美容面、精神面でも多くのトラブルを起こしやすくなります。多毛やにきび、薄毛など、男性ホルモンの影響が疑われる症状が出ることがあります。
10代、20代の若い世代に、外見の悩みは大変な負担になるでしょう。

女性もある程度の男性ホルモンは必要ですが、過剰に増えるとこれらの症状を引き起こしやすくなります。
PMOSという名称に変わることで、排卵障害の治療だけでなく、長期的な病状管理も意識させる意図があります。PMOSを発症する原因は不明で、2026年現在ではまだ完治する治療法はありません。治療も不妊治療中など、特別な期間に限られることもあります。
しかし、PMOSの病状を長期的にコントロールできれば、月経異常や肥満リスクなどを減らすことができます。

さらに、PMOSは排卵障害以外の健康リスクを上げることが知られています。
PMOSは血糖値を下げるインスリンというホルモンが効きにくい体質になりやすく(医学的には「インスリン抵抗性」といいます) Ⅱ型糖尿病のリスクが高まります。
海外ではPMOSと肥満とインスリン抵抗性は強く関連するケースが多いですが、日本人はPMOSを発症すると、肥満でなくてもインスリン抵抗性が高くなるおそれがあります。

PMOSの名称変更は、排卵障害の治療だけでなく、長期的な健康管理を促す意味があります。PMOSの症状を緩和する治療を続けることで月経異常の改善やにきびなど外見トラブルの緩和が期待できます。

PMOSはどのように診断する?日本の診断基準

日本産科婦人科学会の診断基準では、PMOSの主な確認項目は以下になります。問診や血液検査、経腟エコーなどで確認します。

・月経周期異常(月経が3ヶ月以上来ない、出血はあっても排卵していないなど)
・多囊胞卵巣所見(卵巣に卵胞がたくさん見える)
・AMH高値(小さな卵胞から分泌されるホルモン、AMHが高い場合、PMOSを疑います)
・アンドロゲン過剰症(総テストステロン高値や多毛などは、男性ホルモンの影響が疑われる症状)
・多毛の評価(アンドロゲン過剰症の診断の一つで、多毛の有無や部位を確認します。にきびや脱毛など他の身体的特徴は、診断基準の対象外です。)
・LH高値(排卵を促すホルモン、LHが異常に高い)

ただし、思春期ではPMOSの確定診断は慎重に行われます。初経を迎えてからしばらくは月経周期が不安定で、健康な人でもPMOSのように見えることがあるためです。
その場では確定診断ができなくても「PMOS疑い」として経過を見ることがあります。月経不順が続く場合は、10代でも婦人科で相談しておくとよいでしょう。必要に応じて経過観察や治療を受けることで、にきびや肥満、多毛などが緩和されることがあります。
具体的には初経3年後に⽉経周期の再評価を行い、初経から8年後に超音波検査で卵巣を観察し、確定診断を行います。

PMOSの治療法は、妊活中とそれ以外で異なります

検査でPMOSと診断されたら治療を行います。名称がPMOSに変わっても、基本的な治療方針は従来のPCOSと変わりません。妊娠を希望している場合と、すぐに妊娠を希望しない場合で治療法が変わります。

妊活中、不妊治療中は排卵を促すことを優先し、排卵誘発剤を使うことが一般的です。タイミング療法から排卵誘発剤を使用し、確実な排卵を促します。メトホルミンなど糖尿病治療薬を併用することもあります。
ただし、PMOSの方は卵巣過剰刺激症候群(OHSS)という副作用リスクが上がります。卵巣が腫れて腹痛や吐き気を起こす、血管から体液が漏れて腹水が溜まる、血栓症が起きやすくなるなど、さまざまな症状が現れます。重症の場合は入院が必要になることもあるため、慎重に投薬を行います。

すぐに妊娠を望まない場合は、低用量ピルや黄体ホルモン療法など、ホルモン治療を行います。
低用量ピルは月経周期の安定や月経痛の緩和で服用されますが、PMOSの症状も和らげ、月経周期を整えることができます。月経が安定すると子宮内膜が定期的に入れ替わるため、子宮体がんリスクの低下につながる可能性があります。
ホルモンバランスを安定させることでにきび、多毛などを和らげ、美容面の改善も期待できます。

BMI25以上の肥満の方は、適度な食事管理と運動習慣に加えてメトホルミンなど糖尿病治療薬を服用することがあります。メトホルミンはインスリンが効きやすくする作用があり、インスリン抵抗性を緩和します。

PMOSの治療法は一つではなく、年齢や月経周期、排卵の有無、AMHなどホルモンの値、体重、血糖、妊娠希望の有無などにより変わります。PMOSは長期間、病状を管理していくことが大切です。治療を続けることで心身の負担を減らしながら生活しやすくなるでしょう。



参考サイト

日本産科婦人科学会 多囊胞性卵巣症候群に関する全国症例調査の結果と本邦における新しい診断基準(2024)について

MEDICAL TRIBUNE 多嚢胞性卵巣症候群、新名称「PMOS」に国際合意

医療機関マーケティングディレクター H.R

医療機関マーケティングディレクター H.R

本業では医療機関のマーケティングディレクターとして、複数の医療機関のWebサイト制作および広告運用、Web戦略設計・改善を担当しています。 『みんなの妊活』では、本業で培った医療機関Webマーケティングの知見をもとに、妊活に関する正確で分かりやすい情報をお届けできるよう努めています。 マーケティングディレクター歴:12年 担当医療機関数:5施設 得意領域:Web戦略設計、サイト改善(UI/UX)、SEO対策、アクセス解析、広告運用、コーディング

関連記事

特集記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

医療機関マーケティングディレクター H.R

医療機関マーケティングディレクター H.R

本業では医療機関のマーケティングディレクターとして、複数の医療機関のWebサイト制作および広告運用、Web戦略設計・改善を担当しています。 『みんなの妊活』では、本業で培った医療機関Webマーケティングの知見をもとに、妊活に関する正確で分かりやすい情報をお届けできるよう努めています。

人気記事ランキング

  1. 1

    白色以外は危険なサイン?精液の色が変わったときは泌尿器科で相談を

  2. 2

    妊活、どのタイミングで病院にいくべきか

  3. 3

    大人になってから40度近い高熱を出したことがあるけど精子は大丈夫?

  4. 4

    卵子と受精する精子はひとつだけなら、精子の数は少なくてもいいの?

  5. 5

    精子はできるだけ溜めておいた方がいいの?

最近の記事

  1. 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が多内分泌代謝性卵巣症候群(PMOS)に変更されます。その意味は?

  2. 沖縄県で不妊治療助成がある自治体は?

  3. 薬局でED治療薬の販売が始まります。シアリス®の特徴と注意点を解説

  4. 夏の温活は必要?温暖化時代に見直したい冷え対策

  5. 石川県で不妊治療助成がある自治体は?自治体ごとに特色豊かなのが特徴です。

TOP
CLOSE